- 発行日 :
- 自治体名 : 大阪府高槻市
- 広報紙名 : 広報たかつき(たかつきDAYS) 令和7年12月号 No.1453
しろあと歴史館では、市内の旧家各所に伝わった生活道具を収蔵しています。中には、婚礼の際に用いられた品々も。民家の蔵などに眠っていた、ハレの日の道具や衣装です。
大正時代頃まで、婚礼の儀式やうたげは嫁ぎ先の自宅で行われるのが一般的でした。花嫁は嫁入り駕籠(かご)か、人力車に乗って輿(こし)入れします。蔵に長くしまわれていた嫁入り駕籠の多くは傷んでいますが、乗降口に引き戸が付き、窓には障子やすだれが取り付けられた上等なもの。内部には棚やひじ置き、背あてなどもしつらえられています。
収蔵品の一つで、明治時代末の花嫁衣装と伝えられるのは、豪華な織地の色打掛(いろうちかけ)。打掛の裾は綿を入れて膨らませてあり、裏地は鮮やかな紅羽二重です。白羽二重の下襲(したがさね)と綿帽子とともに保管されていました。下襲は、礼装のときに着物の内側にかさねて着付けるものです。綿帽子は、白無垢(しろむく)と合わせて着用するかぶりもので、花嫁を人目や魔物から守るとされていました。
親戚や縁者を招いてのうたげには、10~20人前の膳とわん、大小の茶わんや皿、酒器など多くの食器が必要です。それぞれの木箱には、家名が記されていることが多く、中には親戚から譲り受けたことがうかがわれるものも。金継ぎや鎹(かすがい)で補修した陶磁器類もあり、大切に使われてきたことが感じられます。
家族の歴史に立ち会い、暮らしを支えた品々は、地域の歴史や生活様式を伝える文化財として、歴史館で新たな役目を担っています。
(しろあと歴史館)
