- 発行日 :
- 自治体名 : 大阪府和泉市
- 広報紙名 : 広報いずみ 令和7年4月号
■座の史料に女性も登場 新たに見つかった黒鳥の古文書
和泉市教育委員会と大阪公立大学文学部日本史研究室は、二〇二三年・二〇二四年の二年度にわたって、黒鳥町で地域の歴史的総合調査(合同調査)を行いました。今年も多くの成果が得られました。
黒鳥地域には、中世黒鳥村文書(府指定文化財)や江戸時代の庄屋文書など古文書が豊富に残されています。これまで数多くの研究が積み重ねられ、十一世紀から十九世紀にかけての村の様子が明らかにされてきました。そのため、すでに調査が尽くされていた感もありましたが、二〇二三年度に改めて黒鳥町の総合的な調査に着手し、辻(つじ)・郷(ごう)・坊(ぼう)・上(かみ)の各集落(町会)に残る様ざまな史料を新たに発見することができました。また、町会ごとに聞き取り調査を行い、近現代の地域の様子が少しずつ明らかになりました。
この準備過程で、江戸時代末に庄屋を勤めた浅井家で、これまで確認されていた以外にも未調査の古文書が大量に保管されていることが判明したため、今年度も引き続き調査をすることにしました。
新しく発見した浅井家文書にも大変貴重な古文書が数多くありました。たとえば江戸時代後期から昭和にかけての家の経営帳簿、隣村一条院村に関わる古文書、信太境内をめぐる争論(そうろん)絵図など、数え上げれば切りがありません。
辻村(辻小路)の座の江戸時代の史料もその一つです。昨年の調査で辻小路座の史料を調査し、明治以降の様子は少しずつ明らかになってきましたが、江戸時代の実態はわかっていませんでした。そこで、新発見の座に関する古文書を大阪公立大学の授業で取り上げ、分析を重ねました。その内容の一部として、江戸時代後半に記録された会計簿を紹介しましょう。
座の収入は、座入料(ざいりりょう)・結納料・顔見せ料・足洗料・祝言料、初養(うぶやしない)料・蚊屋土産(かやみやげ)料・五月粽(ちまき)料などです。座員は、出生、婚姻、出産、養子入りなど、人生の節目ごとに祝儀を納めていました。
座の行事は、これらの収入をもとに営まれました。たとえば、七月七日(旧暦)には当番「宿(やど)」の家で六人衆の集まりが開催されました。七月六日・七日は、「山祭」「松割」が行われる日でした。黒鳥では、古くから大篝(おおかがり)や篝火(かがりび)の行事が行われており、黒鳥村において重要な祭日だったようです。
この帳面には女性も登場します。祝言にともなう「たのみ料」を納めているのは、ほぼ女性です。媒酌(ばいしゃく)人に関する費用でしょうか。また、別の史料では、嫁入りの披露目行事が座で営まれ、その座席が記されています。庄屋ら村役人の妻が正面に座し、その両側に村内の女性たちが年齢順に着席しています。座はもっぱら家の当主(男性)らによって営まれるため、女性と座の関わりは、市域でもほとんど判っていません。
今後、史料の読解を深めることで、様ざまな黒鳥の歴史の実態が解明されるはずです。
文:齊藤紘子(大阪公立大学准教授)
問合せ:市史編さん室
【電話】44・9221