くらし 【特集】未来を耕す若手生産者たち~新しいぶどう栽培の形~(1)

柏原市のぶどうは、100年以上の歴史を誇る自慢の名産品です。しかし生産者の高齢化や後継者不足により、労働力が低下し、栽培面積の縮小や耕作放棄地の増加が進み、生産を維持するのが難しい状況になっています。またぶどうは、1年中収穫できないため、決まったシーズンにしか収入を得られません。そのような状況を改革しようと、大阪ぶどうを全国に広めることで、産地の活性化を目指したり、農作業を効率よく栽培できる取り組みを始めたりする若手農家がいます。今回、熱い想いを持って活動している二人の生産者の想いと取り組みを取材しました。
農業関連ビジネスに取り組もうとする農業者のプランを評価し、ビジネスプランの実現を応援する第4回おおさかアグリイノベーショングランプリでファイナルに進出し、準グランプリを受賞した奥野さんは、大阪ぶどうを全国の人に知ってもらうため、柏原市にぶどうの観光拠点を作るプランを発表しました。特別賞を受賞した稲山さんは、大阪の農業をIoT農作業先端地域にしていくための発表を行いました。
また、奥野さんは、体験型オーナー制ぶどう園のプロジェクトで第63回全国青年農業者会議でも会長賞を受賞しました。柏原市のぶどう農業を未来へつなぐため、若手生産者たちの情熱と革新を通してヒントを探していこうと思います。

■大阪ぶどうを全国に知ってほしい
~新しい価値の提供と体験型オーナー制ぶどう園の取り組み~
第4回おおさかアグリイノベーショングランプリ 準グランプリ受賞/第63回全国青年農業者会議のプロジェクト発表 全国農業青年クラブ連絡協議会会長賞受賞
奥野 成樹(おくの しげき)さん

大阪ぶどうの魅力を多くの人に知ってほしいと奮闘する、かねおく農園の奥野さんに想いや取り組みについてお話を伺いました。「産地を盛り上げて、大阪ぶどうを全国の人にも知ってもらいたい。そのためにはぶどう狩りやぶどう直売だけでなく、これまでに無かった価値の提供が必要だ」と考え、実現に向けて少しずつ活動を進めています。遠方からわざわざ柏原市まで足を運んでもらえるような場所を作り、そこでぶどうの加工品販売や、ぶどうの景観的価値の提供にもチャレンジしたいとのことです。
奥野さんがこのような想いを強く持ったきっかけは、東北の会社を退職し、ぶどう農家を始めるということを当時の同僚に伝えた際、関東や東北出身者に「大阪でぶどうが栽培されているなんて初めて聞いた」と言われたことでした。そのことに衝撃を受けた奥野さんは、多くの人に柏原市に足を運んでもらい、全国に大阪ぶどうを知ってもらう機会を提供できるようなぶどう農家になりたいと決意しました。既存のぶどう栽培を行いながら、新しい取り組みを始めることは決して簡単ではありません。しかし奥野さんは、「将来は生産者だからこそ実現可能な、付加価値のある特別な体験や商品を提供したい」と笑顔で話していました。
既存の取り組みの一例として、体験型オーナー制ぶどう園「OKUNARY」があります。消費者にぶどうの栽培から収穫まで1年を通して体験をしてもらい、収穫したぶどうをワインに加工し消費者に還元する会員制プロジェクトです。参加者は自分の好きなタイミングで畑の手入れを行います。一方で、奥野さんがメールマガジンで畑の情報や、作業用YouTube動画を提供して運営をしています。年間で5回ほどの農作業イベントも開催しているとのことです。本人は消毒以外の作業にほとんど手を出さないようで、理由を聞いたところ、「消費者と農業が近くなることで、農業への関心や理解が高まり、それが新規就農に繋がったり、自分でも挑戦をしてみたいという気持ちになると思っているからです」と信念を話してくれました。
「OKUNARY」についてより詳しく知りたい方はウェブサイトをご覧ください。

◇かねおく農園直売所 information
日時:7月下旬から9時~18時
場所:国分東条町4168-3
皆さんへのコメント:かねおく農園では、堅上地域でシャインマスカットや、大阪の特産デラウェア、その他十数品種を1.7haの面積で栽培しております。食味を良くすることに注力しており、毎年リピートしてくれるお客様の期待をさらに超えられるよう、真剣にぶどう作りに取り組んでおります。

問合せ:【電話】072-977-1936