くらし 【特集】未来を耕す若手生産者たち~新しいぶどう栽培の形~(2)

■農作業の負担を減らしたい
~作業の省力化と安価に手に入れられる機械を作る~
第4回おおさかアグリイノベーショングランプリ 特別賞受賞
稲山 純生(いなやま すみき)さん

ぶどう栽培の傍ら、日夜農作業の省力化に向けて市販品の機械に改良を加え、またオリジナル機械の開発を行っている稲清農園の稲山さんにお話を伺いました。現在、手掛けているのは、設定した温度で作動する市販品のビニールハウス自動開閉装置に、湿度変化によっても動作するよう機械を加工していること。また、麓の水源から山の上にある農園の水槽まで水を送るポンプに、水槽内で常に一定の水位を保てるように自動調整する制御装置を自力で開発し、試験的に導入していることです。
稲山さんがこの取り組みを始めたきっかけは、実家のぶどう農園で働き始めた時、他の農園では導入している自動開閉装置がないことに気づき、なぜ導入しないのか家族に聞いたところ、自分の栽培方法に適した機能が付いていないからと知ったことでした。「それなら自分でほしい機能を追加したら、もっと便利になるのではないか」と興味が湧いたとのことです。企業に依頼すると高価になるため、使いやすく、かつ安価で使えることを目標に、独学で電気に関する事を勉強し、大学院時代に経験したプログラミングの知識も活かし、スマート農業ができることを目指しています。
また、ICT(情報通信技術)の活用も視野に入れており、取り付けた装置から随時ほしいデータをスマートフォンへ自動で通知してくれる機能も追加し、農作業に活用できるか検証しています。まだデータの蓄積段階とのことでしたが、将来は得られたデータからぶどうの品質向上や安定的な栽培に繋がるように活用したいと話していました。
最後に、ぶどう栽培で忙しい中、自ら改良や開発を行っている理由を尋ねたところ、「ぶどうの作り方は農家によって違います。そのため市販品の機械に、栽培方法に応じて設定を変更できるような機能がないと農家に普及していくスピードが遅いと感じています。また、機械そのものが高額なため導入を見送る農家もいると思います。機械に追加機能を付けられ、それが安価で使えるようにする。そんな取り組みを誰かがやらないといけないと考えているからです」と熱い想いを話してくれました。

◇稲清農園 information
日時:6月中旬から8時~18時
場所:田辺2-6-52
皆さんへのコメント:稲清農園は柏原市で100年以上ぶどうを栽培・販売しています。特に品質にこだわり、適正着果量の管理、樹上完熟、土づくりを徹底。非効率でも手間を惜しまず、味に妥協しない栽培を心がけています。今年から店舗改装しリニューアルオープンします!

問合せ:【電話】072-977-1740

■生産者だけじゃない 注目されている虹の雫
「虹の雫」最近名前を耳にする機会が増えてきたのではないでしょうか。このぶどうは、「美味しくて種のない大阪のオリジナルぶどうの開発を…」という生産者の想いから研究が始まり、今から52年前の1973年に(地独)大阪府立環境農林水産研究所で誕生しました。しかし、実が色づき始める時期の気温によってぶどうの色が安定しないことが、他の品種と比べ着色不良と消費者から認識される可能性があったり、粒を大きくする「ジベレリン」が当時は使用できなかったりと取り扱いが難しいなどの理由から品種登録は見送られました。
そこから約40年後、再び生産者から大阪オリジナルぶどうを望む声と、さまざまな色どりが時代が進むと共に、消費者にオリジナリティとして受け入れられるようになったことが復活のきっかけとなり、2018年に多くの人に愛される美味しいぶどうになるようにと「Popular Nice Taste」の頭文字をとって、ポンタとして品種登録されました。その後、愛称を公募し「虹の雫」と命名されました。
さて、気になる「味」ですが、濃厚な甘さとフルーティーな香りが特徴で一度食べたら忘れられない、特別な味わいが口いっぱいに広がります。また、収穫時期や栽培方法によって果実の色が虹のように変化するとともに、香りも「赤」は甘く華やか、「黄」は濃厚な甘さ、「緑」はさわやかと、色合いに応じて違いが見られます。
令和6年には、阪神百貨店梅田本店で数量限定でしたが本格販売を行いました。新しい品種で、栽培数量が限られているため出荷量はまだ多くはないですが、見かけたらぜひご賞味ください!
大阪オリジナルぶどう「虹の雫」の販売所マップは、大阪府のウェブサイトをご覧ください。

■柏原市のぶどう産業を一緒に支えよう!!
◇担い手になって貢献! 柏原ぶどう担い手塾
ぶどうの産地「柏原市」で就農を目指す方や、アルバイト、ボランティアなどで柏原ぶどうの生産に力を貸してくれる「ぶどうの担い手」を育成するために、「柏原ぶどう担い手塾」を開催しています。
ぶどう農園で実際の生育作業を行いながら、農業者、JA大阪中河内の営農指導員、大阪府の普及指導員などの専門家からの指導を受け、一年を通じたぶどう栽培を学んでいただいています。
※今年度の塾生募集は終了しています。

◇食べて応援!
市内各所にぶどう直売所があり、農家さんによって栽培方法が違うので食べ比べがオススメ!
みずみずしくて、あま~いぶどうを今年も堪能してください!各直売所の詳しい場所などは本紙2次元コードからご覧ください。
もっとぶどうのことについて知りたいと思った方は、「柏原ぶどう情報ガイド」がオススメ!「へ~」と思うような内容が盛りだくさん!ぶどうのことを知った後に食べるぶどうは格別かも⁉
こちらも本紙2次元コードからぜひ!ご覧ください。