- 発行日 :
- 自治体名 : 兵庫県豊岡市
- 広報紙名 : 広報とよおか 2025年10月号
■あれから21年 37人の知恵と勇気が生んだ奇跡
◇西村勉(にしむらつとむ)さん
野田在住。豊岡市にも甚大な被害をもたらした、2004(平成16)年10月20日の台風23号で、京都府舞鶴市の由良川が氾濫した際、水没した観光バスに乗っていた。乗客乗員37人は一晩バスの屋根の上で、風雨に耐えて過ごした。当時、バスの屋根の上にいたひとり。
あの日、福井県から豊岡市へ向かうバスが台風23号による大雨で立ち往生しました。道路は浸水し、バスの中まで水が上がってきたため、乗客たちは窓を割って屋根へ避難。暗闇と膝下まで水が迫る中、流されないようカーテンで作ったロープを握っていました。恐怖と寒さに耐えながら「全員で助かるんだ」という強い気持ちを共有し、歌を歌ったり、互いを励ましたりして乗り越えました。全員が無事だったのは、広域的な災害対策の連携や個々の勇気と知恵、そして何よりも団結があったからこその奇跡だったと思います。
この経験は、5年ほど続くトラウマとなりましたが、同時に多くの教訓をもたらしました。「備えあれば憂いなし」という言葉だけでは対処できない事態があることを痛感しつつも、事前の準備の重要性を再認識しました。皆さんも、どうか日頃から、自分以外の誰かのことを少しだけ気にかける、そんな温かい心を大切にしてください。