- 発行日 :
- 自治体名 : 兵庫県朝来市
- 広報紙名 : 広報朝来 令和7年8月号
■絵の持つ力で、想いを伝える
大森さんが描く絵には、土や植物など目の前にある自然の循環の尊さや、そこに宿る営み、記憶が表現されている。山の中に身を置くことで、生きることの困難さと美しさを実感し、それが創作の源になっているという。都会のような環境では眠っていた感覚が、この土地では研ぎ澄まされる。土や植物に触れるたび、どこか懐かしい、祖先から受け継がれた記憶が呼び覚まされるように感じるとも語る。絵は言葉のように分かりやすくはないけれど、見る人の心にまっすぐ届く力がある。大森さんは、自然の中に生きる人間本来の感覚が、絵を通して思い出せてもらえたら嬉しいと、柔らかく微笑む。
■日々の暮らしの中にあるささやかな幸せ
大森さんが初めて朝日を訪れた時、山に満ちる澄んだ空気の匂い、手足に伝わる土の感触、口いっぱいに広がるとれたての野菜の味に、身体の細胞一つ一つが喜んでいるように感じたという。今は、廃材を使って自分たちの手で建てた家に暮らし、野山で採れた山菜や野草をいただきながら、自然の恵みとともに生きる日々を送っている。そんな暮らしの中で、小さくても確かな幸せを感じるたび、人は自然と戯れるために生まれてきたことを実感するという。田舎に暮らしていても都会と変わらぬ暮らしができる今、自分の身体や暮らしを見つめ直してほしい。そのきっかけが絵を見た人の心に灯ることを願っている。
大森 梨紗子(おおもりりさこ)さん(朝日)
埼玉県出身で美術大学に通っていた大森さんは、在学中、卒業後の進路を考えていた時期に、パプアニューギニアの文化を学ぶ研修に参加した。その際、朝日で農場を営みながら自給自足の暮らしをしている大森げんさんと出会う。帰国後、すぐに彼の実家を訪れ、自然とともに生きる暮らしに強く惹かれた大森さんは、卒業後、大森家の山の暮らしを体験するために朝来市へ。身の回りにある自然から必要なものを自分たちの手で作り、その暮らしを楽しみながら絵を制作する、これこそが求めていた理想の生活の形だと実感したという。その後、げんさんと結婚し、現在は画家として人間本来の自然との営みをテーマにした絵画の制作を続けている。
