文化 野草散歩(180)

■ミヤマイラクサ(イラクサ科)
山野を歩きながら植物遊びを楽しんでいると、時に不覚をとることがあります。草の中には微細な刺を持つものもあり、気づかないまま掴んでしまったりします。痛い思いは一瞬で消えることもあれば、いつまでも痛痒(いたがゆ)さが治まらなかったり、傷跡が化膿したりすることもあるので気を付けなければなりません。このミヤマイラクサ(深山刺草)も、触れると痛痒さがしばらく続く、注意が必要な野草です。
分布は北海道南部から九州までで、山深い湿気のある暗がりなどに自生しています。日本の固有種でもあるイラクサ科の多年草で、草丈は80~150cm、全草に細かな刺毛(しもう)が密生しています。これにはヒスタミンなどの毒成分が含まれており、触れると先端が折れて皮膚などに食い込むので、痛みや痒みがしばらく続きます。雌雄同種で雌花は6月頃、先端から数本の穂状の花柄を出し、花柄上にまばらな雌花を付け、雄花はその下の葉脇から多数出ます。花は1mmに満たない微細な白い小花が数個ずつ付きますが、緑ががった萼に白い点状の花が付くので、一見して花とは見えない姿です。葉は互生し、大きくほぼ円形で長さ8~20cm、葉先は長く尾のように伸び、粗い鋸歯縁となっています。
芽出しは春早く柔らかな茎を伸ばします。これは古くから、特に東北地方などで、山菜として親しまれてきたようです。記述によると、芽出しからすでにヒスタミンなどの毒を含むが、熱を加えると毒は消えるので危険はないということです。しかし、多少は残るので、大量に食するのは危険であるとのことです。

文・写真 中澤博子さん