文化 いにしえの風 斑鳩文化財センターだより

■春季企画展「斑鳩の古墳をさぐる-奈良大学との共同調査の成果-」のみどころ
今月号では、7月3日(木)まで斑鳩文化財センターで開催中の春季企画展のみどころについて紹介します。

◇ヒヅメ金塚(きんづか)古墳とは
今年の2月から3月にかけて行ったヒヅメ金塚古墳の調査成果についてご説明します。
ヒヅメ金塚古墳は、数年前に話題となった、法隆寺観光自動車駐車場内の「舟塚(ふなづか)古墳」から、北東方向へ約130mのところにかつてあった古墳です。
明治26(1893)年に野の淵龍潜(ぶちりゅうせん)により記された『大和古墳墓取調書(やまとこふんぼとりしらべしょ)』には、ヒヅメ金塚古墳は、「高二尺 根廻一間(ねまわりいっけん)」と書かれています。現代の数値に言い換えると、高さは約60cm(一尺=約30cm)、古墳の周囲の長さ(根廻)は、約1.8m(一間=約1.8m)です。また、大正14(1925)年に刊行された『奈良縣史蹟勝地(ならけんしせきしょうち)調査会報告書 第八回』には、古墳の形は「円形」と記されています。円墳の場合、古墳の周囲の長さが約1.8mとすると、直径は60cm程度になります。
そんなに小さな古墳があるのかと思われるかもしれませんが、本来はもっと大きな古墳であったものが、墳丘の周囲を徐々に削り取られて小さくなったものと考えられます。また、地元の人の話によると、昭和50(1970)年代頃まではわずかな高まりが残っていたようですが、いつしか耕作などにより削られてしまったようです。

◇下水道工事で埴輪が見つかる
平成6(1994)年、かつて古墳があったとされる土地の南側に隣接する町道で下水道管の埋設工事があり、その時に行った立会調査で埴輪(はにわ)が見つかり、はじめて出土遺物からヒヅメ金塚古墳の存在が確認されました。ただし、この時に埴輪が見つかった場所は不安定な地盤であったため十分な調査が行えず、詳しいことはわかりませんでした。

◇令和7年の発掘調査成果
今回、かつて古墳があったとされる土地の所有者のご協力により、発掘調査を実施することができました。平成6年に埴輪が見つかった南側の道路と並行するように東西方向に設定した調査区から、直線状をした古墳の濠の可能性がある溝が見つかり、溝の中から大量の埴輪や土器が出土しました。埴輪には、円筒埴輪(丸い筒状の形をした埴輪)のほか、馬や人物の形をした埴輪、蓋(きぬがさ)(高貴な人にかざす傘)形(がた)埴輪など、いろいろな種類があります。
今回の展示会では、町内にあるさまざまな古墳の調査成果を展示しています。みなさん、ぜひ、この機会にご覧ください。

問合せ:地域振興課(斑鳩文化財センター)
【電話】0745-70-1200