健康 ばね指

「ばね指」とは、指に発症する腱鞘炎(けんしょうえん)の一種で、指の付け根の痛みや腫(は)れなどの症状が現れます。
ばね指は朝方に悪化することが多く、日中は指を使用することで症状が改善しますが、病状が悪化すると、『ばね現象』と呼ばれる指がはねるような動作を伴うようになります。

■原因
主な原因には、指の使い過ぎや女性ホルモンの減少があげられます。
指と前腕をつなぐ筋肉が腱となって骨につながっており、バンドのようなループになっている「靱帯(じんたい)性腱鞘」の中を行き来することで、滑らかに指を曲げたり伸ばしたりできます。
しかし、腱鞘がむくんで厚くなったり硬くなったりすると、腱鞘とその中を通っている屈筋腱(くっきんけん)がこすれ合い、炎症が起こり腫れが生じます。このため、腫れた部分が引っかかって、指を伸ばそうと強い力を加えると「カクン」と跳ねるようになります。このように発症するのがばね指です。

■症状
指の付け根に腫れ、熱感などの症状が現れます。初期では、ばね指の症状は朝方が強く、日常動作を重ねることで徐々に症状が緩和されます。
「靱帯性腱鞘」の中には「滑膜(かつまく)性腱鞘」があり、潤滑油の働きがある滑液が腱鞘内を流れています。夜に指を動かしていないと滑液が流れないため、朝方の動きはじめには痛みを感じますが、日中、徐々に動かすにつれて滑液が流れるため、症状が改善します。
ばね指は進行すると、滑膜腱鞘が圧迫されて滑液が枯れるため、指の曲げ伸ばしがスムーズにできなくなります。さらに締め付けが強くなると腱鞘の前後で腱がコブのように肥大し、それが腱鞘を通るときに「ばね現象」がみられるようになり、指がひっかかるような動作をするようになります。さらに悪化すると、指が動かなくなる(ロッキング)こともあります。

■治療
炎症を和(やわ)らげるために、指の使用頻度を減らすことが重要です。この際、関節が拘縮(固くなること)する可能性があるため、装具での固定などは基本的に行いません。関節が固まらないように温めながら伸展ストレッチなどを行います。
痛みが強く生活に支障をきたす場合は、炎症が生じている腱鞘の内部にステロイド薬を直接注射しますが、2回以上続けて腱鞘内に注射すると、腱断裂を起こす可能性が報告されています。
ステロイド注射をしても再発を繰り返す場合は、引っかかりが生じている腱鞘を開く腱鞘切開を行います。
なお、糖尿病の方は腱鞘炎になりやすく、同時に再発を招く要因でもあります。再発を繰り返さないためには、糖尿病の治療をしっかり行うことも重要です。

奈良県医師会