くらし 町長室から No.102


子どものころ、私の世代は『鉄腕アトム』を見て育ちました。21世紀になれば、車は空を飛び、どの家庭にも人型ロボットが1台はいるはずだと信じていました。ところが実際の21世紀は、思い描いた未来とは少し違い、お掃除ロボットが壁にぶつかりながら懸命に働く程度です。同世代が集まると「こんなはずじゃなかった」と酒の肴になることもしばしばです。
しかし昨秋、AIとロボット技術の講演に参加した際、「2030年には人手不足に悩む工事現場で人型ロボットが活躍する時代が来る」と聞き、未来は確実に近づいていると感じました。日本の十八番である産業用ロボットは、精度や反復動作の速さが求められます。一方で人型ロボットは、多少大雑把でも日々の仕事を〝そこそこ〞こなしてくれることが価値だとお聞きしました。人への安全は第一としながらも、仕事は完璧よりも「ほどほど」。そこに新しい市場があるのだというのです。
昨年夏、中国・北京で開かれた「世界人型ロボットスポーツ大会」では、マラソンや短距離、そしてサッカーまで、各社のロボットが力を出し合いました。失敗しても温かく応援する雰囲気が印象的でした。日本では、もし自社ロボットが1500メートルを完走できなかったら、サッカーで倒れて起き上がれなかったら…と企業イメージを気にして大会自体が成立しないのでは、と思ってしまいます。「完璧なものを丁寧に」は日本の美徳ですが、失敗を恐れず挑戦する姿勢もまた次の時代には欠かせません。
10年近く私の部屋を掃除してくれているルンバが、あちこちにぶつかりながら懸命に働く姿を眺めつつ、5年後、10年後には人型ロボットが家庭の掃除をしているのかもしれない。それも案外大雑把で愚痴を言う相手がロボットだったりするのかもしれない。私の新年の妄想は膨らみ続けています。

南部町長 陶山清孝