くらし 南部町のいきものたち(219)

■ナワシロイチゴ
◇目立つ赤い実
2024年6月27日、法勝寺中学校から帰ろうとしたら、ふと赤いものが目に入りました。自転車を止めてしゃがんで見ると、野生の苺がたわわに実っているではありませんか。葉っぱの形と実の色でナワシロイチゴと判明。これまでこのイチゴの濃いピンクの花は各所で見たことはあったのですが、結実した姿はなかなかご縁がなく、実がついていてもほんの数粒だけのものばかりでした。ところが今回出会ったナワシロイチゴは、直径が1.5cm以上、ひとつひとつの核果がたっぷりと瑞々しく膨らみ、傷みも少なく新鮮で、しかも1か所で100粒を超える豊作にとても驚きました。花が咲いている時に、よほどいい虫がやってきて上手に受粉をしてくれたのでしょう。

◇ナワシロの由来
ナワシロは漢字で「苗代」。田植えをする前に、種籾を育てて苗を作る田んぼのことです。図鑑や資料などを見返すと、「苗代を作る頃に実るから」と「苗代を作る頃に花が咲くから」という2つの由来が見られます。地域によって異なりますが、早い所では5月の大型連休には田植えが始まり、南部町も5月中旬あたりから田植え機が忙しく動いているのですが、ナワシロイチゴの実を味わえるのは5〜6月くらい。その頃に苗床の準備をしていては間に合いません。花が咲く4月から苗代を作るという流れの由来がしっくりきますね。

◇もちろん可食
町内には、クサイチゴやフユイチゴなど10種類以上の自生野苺が確認されています。いずれも普通種として里地里山の身近な植物です。ラズベリーのような粒々感のある果実は、どれも美味しく食べられます。ナワシロイチゴは、ナガバノモミジイチゴなどに比べると糖度が少し低めかもしれませんが、やや強い酸味と控えめな甘さをお好みの方にお勧めです。これも里山の恵みですね。鳥たちの分も残して味わいましょう。

自然観察指導員 桐原真希