- 発行日 :
- 自治体名 : 山口県下関市
- 広報紙名 : 市報しものせき 令和7年12月号
■篠田 力さん
世界マスターズ水泳2025シンガポール大会で400m自由形で金メダルなど、3つのメダルを獲得
生涯スイマー、挑戦の記録
●日々の積み重ね 実り世界の頂点へ
▽水と共に歩む人生
小学生の頃は、体が弱く1カ月以上学校を休んだこともあるという篠田さん。「鍛えなければ」と、中学では水泳部に入部。豊浦高校3年の時には県大会で2位に入賞しますが、全国の壁を感じ、大学ではスイミングクラブでコーチのアルバイトはするものの競技からは離れました。
大学卒業後は、会社員として、全国を転勤する忙しい日々で水泳から遠ざかることに。34歳の時に、家業の割烹料理店を継ぐため下関に戻り、40歳で店主に。自分の時間が持てるようになり「最初に頭に浮かんだのが水泳だった」と振り返ります。大和町にリフレ・スポーツクラブが開業したのを機に「すぐに入会しました。会員番号1番です」。趣味として再開した水泳は生活の一部となり、泳いだ距離を記録するようになりました。
▽努力を日常にする
年180日以上通い、年間400キロを目標に泳ぎ続けています。1時間で3キロ、ただひたすらに泳ぐ。「特別なトレーニングはしていません。泳ぐことが一番のトレーニングです」。記録帳には、総距離8200キロの数字が。下関からハワイを経て、アメリカ西海岸に迫るスケールです。
「記録を付けると達成感が味わえる。それに、自慢したくなるんですよ」と笑顔。モチベーションの源は、メダルやトロフィーのコレクション。そして「続けることが楽しい」という純粋な思いです。
料理店を切り盛りする傍ら、隙間時間を見つけてはプールへ。「店にいなかったら、プールにいると言われるくらいです」。
シンガポール大会では、80~84歳の部に出場。「3位以内でメダルを」と臨み、800メートル自由形で銀、200メートル自由形で銅を獲得。「もう十分だと思った」中で臨んだ400メートル自由形でまさかの優勝。「無欲の勝利でした」。驚きと喜びが、今も鮮明に残ります。
▽水泳で広がるつながり
篠田さんを支えるのは、年齢や職業を越えて集う地域の仲間。リフレのプールでは、医師や会社員など、多彩な人々と顔を合わせ、「プールに行けば必ず誰かがいる。泳いでいると自然に仲間になっていくんです」。大会では全国各地で再会する顔なじみも多く、励まし合うことが何よりの力に。「水泳のおかげで、心も体も健康でいられる。続けることが生きがいです」。
次の目標は、2年に1回開催の世界マスターズ水泳出場9回目となるハンガリー・ブダペスト、10回目の中国・北京の舞台。「最低でもそこまでは泳ぎたい」と力強く語ります。
篠田さんにとって泳ぐことは、日々を輝かせる生き方そのもの。「年齢は関係ありません。泳ぎたいから泳ぐ。ただそれだけです」。その言葉には、続けることで人生を豊かにしてきた人だけが持つ、揺るぎない強さがありました。
・世界マスターズ水泳・400m自由形のメダリストたち。篠田さんは栄えあるセンターポジション。
・近所にできたスイミングクラブの会員番号1番の篠田さん。2年後の世界マスターズ水泳ハンガリー大会に向けて、今日も黙々と泳ぐ。
・2010年スウェーデン大会から世界マスターズ水泳に出場。最初は12位。8回目となる今回、念願の優勝を果たした。
・世界大会は、ご夫婦での旅も兼ねており、「一緒に観光ができるのも楽しみの一つ」と語る。奥様は、心強い伴走者。
