くらし しもまちキラリ

■菊川スポーツクラブ事務局長
井上 登代子さん
子どもたちの笑顔をきっかけに踏み出した一歩は、やがて大きな挑戦へ。生涯スポーツ功労者として文部科学大臣表彰を受けた井上登代子さんを紹介します。

●正解は分からなかった。でも、やめなかった。
▽はじまりは小さな体育教室
約30年前、井上さんの長男が通う幼稚園で、幼児体育の授業参観がありました。子どもたちが元気よく動き回り、笑顔はじけるその光景は、井上さんが抱いていた幼児体育のイメージを一瞬で塗り替えたといいます。「幼児体育を勉強したい」。湧き上がる衝動に背中を押され、研修に参加することを決意しました。
そうして井上さんが手掛けた初めての幼児体育教室。参加者は数人でしたが、晴れやかな親子の表情に手応えを感じたそうです。これが現在の「ぴょんぴょん教室」。幼児期にさまざまな動きを体験してもらいたい、と井上さんが地域スポーツに携わるきっかけになりました。

▽仲間と乗り越えた苦難の壁
ぴょんぴょん教室を始めて数年が経ち、「下関市と豊浦郡四町の合併で、スポーツ環境が変わるかもしれない」という話がありました。地域のみんなと総合型地域スポーツクラブの設立準備を進めることになります。先のことは誰にも分からない。それでも、「スポーツが盛んな菊川町であってほしい」という思いが、井上さんたちを突き動かします。
しかし、すぐさま壁が。受益者負担で運営する仕組みがなかなか理解されず、「どうしてスポーツにお金が必要なのか」という意見が根強かったのです。準備委員会の中でも「もうやめようか」という声が漏れ出るほど。それでも「少しずつ理解してくれる人が増えれば」と前向きに教室やイベントを開催しました。
井上さんは、「続けられたのは、地域の皆さんの励ましと笑顔、そして一緒に頑張る仲間がいたからです」と振り返ります。

▽地域を支える仕組みづくり
「派手な活動ではないけれど、始めてよかった。若い世代がいるだけで話の内容も明るくなる」と井上さんが誇らしげに語るのは、高齢者向けにスタートした「いきいき健活カフェ 陽だまりの会」
この活動を手伝うのは、「ぴょんぴょん教室」で出会ったお母さんたちです。「子どもがお世話になったから、今度は私たちが地域のために何か協力できたらと思って」と始めたものの、今では参加者の元気な顔を見て、逆に元気をもらっているそうです。
サービスの受け手だった親子が、時を経て、今度はクラブを支える担い手になる。「この人の循環こそ、菊川スポーツクラブが目指してきた姿そのもの」と井上さん。関わった人々が「地元を良くしたい」との思いで、世代を超えて支え合う文化を形成しました。「クラブの理念は『地域・健康・人づくり』。この思いは今も昔も変わっていません」
令和8年10月1日で菊川スポーツクラブは20周年を迎えます。長く続いた挑戦は、クラブと共に成長し、地域を支える確かな仕組みへと育っています。