健康 萩市民病院健康ガイド

■第3回「たかが便秘」と侮るなかれ~あなたのその便秘、大丈夫ですか?~
今回の先生:萩市民病院消化器内科医長 和泉屋勇太(いずみやゆうた)

▼便秘は誰にでも起こりうる身近な病気です
「便秘になったことがありますか?」この質問に「いいえ」と即答できる方はおそらく少数派でしょう。日本の人口の約10~15%が慢性便秘症に悩まされていると推定されており、高齢化に伴い今後も患者数の増加が見込まれています。「もう慣れたから」「市販薬でなんとかなるし」と軽視されがちですが、実は便秘には思わぬリスクが潜んでいるのです。

▼便秘が寿命にまで関わる?
便秘は単なる不快感にとどまらず、腹部膨満感や排便困難、残便感等の症状により生活の質(QOL)が低下するだけではなく、高血圧や心疾患、慢性腎不全など命に関わる病気のリスクも高めることが分かってきています。これらは、排便時の「いきみ」による急激な血圧上昇や腸内環境(腸内細菌叢そう)の変化が影響していると考えられています。慢性便秘症の人は、そうでない人より10年後の死亡率が約12%高いとの報告もあります。さらに、大腸癌や甲状腺疾患、膠原病、パーキンソン病等、重大な病気が便秘の背景にあることもあります。「たかが便秘」と放置せず、適切な治療や精密検査を受けることが重要です。

▼家庭で出来る便秘対策
便秘改善には、薬に頼るだけでなく、出来ることがたくさんあります。是非日々の生活に取り入れましょう。

▽食事
食物繊維・発酵食品・水分を摂取しましょう。
水溶性食物繊維…海藻・果物・野菜など 便に粘性を与え排出しやすくします。
不溶性食物繊維…豆類、ごぼう、きのこ類など 便の量を増やして腸管を刺激します。
ヨーグルト、納豆、味噌など…腸内環境の改善に役立ちます。
水分…適切な水分は便を柔らかくします。

▽運動
運動は腸の蠕動運動を促進し便秘に有効です。
・ジョギングやウォーキング等の有酸素運動
・背伸びや屈伸・腹筋などの軽い体幹運動
・腹壁マッサージ(お腹を「の」の字にマッサージ)を1日15分程度

▽排便習慣の見直し
・毎日同じ時間に起床・就寝し生活リズムを整えましょう。
・毎日朝食をしっかり摂りましょう。
・朝食後に便意がなくてもトイレに座る習慣をつけましょう。
・ストレスを溜めないことも重要です。

▽市販薬を使うときの注意点
市販の便秘薬を使う際は「非刺激性便秘薬」から始めましょう。
「刺激性便秘薬」は即効性がある反面、クセになりやすく、常用すると難治性便秘症になることもあります。漢方薬や健康食品にも、難治性便秘症になるリスクがあるものが含まれていることがあります。

▼こんな症状がある時は、すぐに受診を!
便に血が混じる・便が極端に細くなった・急に便秘になった・腹痛や嘔吐を伴う
このような症状を認める場合、大腸癌や腸閉塞等の重大な疾患の可能性があります。
早めに病院を受診しましょう。

便秘は放っておくと、さまざまなリスクがあります。食事・運動・生活習慣を見直し、必要であれば医療機関もうまく利用して、健康的でスッキリとした毎日を過ごしましょう!

問合せ:市民病院事務部
【電話】25-1200