健康 うちのお医者さん[192]スポーツにおける医療と薬品

阿波町大道北医療法人森下会らいちクリニック 森下裕史(もりしたひろし)先生
近年、スポーツにおいて大会の大小、競技の種類を問わずドーピング検査が実施され、地方大会においても五輪さながらに厳密な場合すらあります。
薬の内容も風邪薬や利尿剤など、一見、筋肉増強に直接関係性のなさそうなものまで問われることもあり、当院外来でも来院時に用いる薬の種類につき白熱した議論を交わしていただいた方もおられます。実際、インターネットでいろいろなサイトにたくさんの情報が載っており、どれをピックアップするかの判断は非常に難しいと思います。
私は直前期の軽い怪我に対しては、薬品を用いない範囲でのデブリードマン処置というものをお勧めします。水道水で患部を1~2分ほど洗い流し、薬局などで買った清潔なガーゼで表面を軽くふき取り、保湿剤のようなものを患部にあててラップで巻き、湿潤環境を保つというやり方です。これは薬品を使わず新しい組織の発現を促すという方法で、ドーピング対策としては理想的です。
また、炎症についても外用薬は内服に比べると比較的に血中濃度に反映されづらいため、大量に塗らない限りドーピング検査に引っかかる可能性は少ないです。ただし、これでも改善しない場合、または一見して縫合が必要な深い傷のような場合には、お近くのクリニックなどから大学病院などの専門機関への紹介を依頼してもらうことをお勧めします。
直前期の風邪の場合には、使うべき薬は大変慎重になります。基本的にはインフルエンザやコロナなど、特定の疾患の検査を行い、陽性なら対症療法をし、陰性なら、JSPO(日本スポーツ協会)の使用可能薬リストに載っている抗菌薬ビタミン剤や軽い解熱剤での対応になり、改善しない場合にはやはり大学病院などへの専門機関へ早期に紹介してもらうのが良いかと思います。
大会の直前に体の具合が悪くなってしまった場合には、なるべく我慢せずに早めに対処していただくことが、更に大きな疾患を未然に防ぐことにつながるため、皆さんで周知していただければ幸いです。

このコーナーは阿波市医師会・阿波歯科医師会・板野歯科医師会のご好意により提供いただいた原稿を掲載しています。