- 発行日 :
- 自治体名 : 徳島県阿波市
- 広報紙名 : 広報あわ 2025年9月号
阿波町高垣松本眼科 松本治恵(まつもとはるえ)先生
涙は、生後すぐの赤ちゃんから高齢者まであらゆる年齢の人を悩ませます。多すぎても困るし、少なすぎても困るからです。
涙の正体は、血液の一部(血管からにじみ出した透明な液体)です。図のように、涙は涙腺で作られ、目の表面を潤し、排水路である涙道(涙のう、鼻涙管)を通って鼻の中に出ていきます。泣いた時の「鼻水」は実は「涙」なのです。
涙腺で作られる涙の量が少ないか、あるいは質が悪いと「ドライアイ」という状態になり、目の表面が乾燥してざらざらになり、痛くなったり見えにくくなったりします。治療は点眼液、眼軟膏、内服薬、涙点プラグ、IPL治療などがあります。涙点プラグは、涙道入口に栓を入れ、目の表面の涙を増やす処置です。IPL治療は、まつ毛の生え際からの油を出やすくし、油で涙表面を覆い、涙を乾きにくくする治療です。
一方、涙が多くなるのは涙道(特に鼻涙管)が詰まり涙が鼻へ排水できなくなる時です。すると涙が目頭から溢れ出します。生まれつき鼻涙管が詰まっている赤ちゃん(先天性鼻涙管閉塞)と、加齢や抗がん剤の使用などで鼻涙管が徐々に狭くなって詰まってしまうパターンがあります。鼻涙管が詰まると目の表面に涙がたくさん溢れ気持ち悪い上に見にくくなります。また、バイ菌も溜まりやすく目やにが増えます。治療は、涙道に水圧をかけて詰まりを解除する「通水」や、針金のような道具で頑固な詰まりを人為的に開通させる「ブジー」、内視鏡を使って詰まっていた部分にチューブを留置する方法や手術があります。バイ菌による目やにには抗菌薬の点眼液も使用します。
涙が少ない、多い、いずれの場合にも早期発見、早期治療が症状改善のカギになります。
「鬼の目にも涙」という感動的な内容ではありませんが、「雀の涙」ほどでも涙のことを知るきっかけとなれば幸いです。
このコーナーは阿波市医師会・阿波歯科医師会・板野歯科医師会のご好意により提供いただいた原稿を掲載しています。