- 発行日 :
- 自治体名 : 香川県
- 広報紙名 : みんなの県政 THE かがわ 令和7年6月号
◆株式会社ワイジーテック
【住所】高松市西ハゼ町354番地4
創業:1890年
従業員数:80人
【電話】087-867-1566
【URL】https://ygtec.co.jp/
さまざまな機械の機構を支える「歯車」。表舞台で光を浴びることは少ないものの、産業に不可欠なパーツづくりに誇りを持って挑む香川のものづくり企業を紹介します。
■小さな歯車の回転で大きなものを動かす「機械の心臓」を手掛けて百余年
◯設計力こそが競争力!
農機具などの鍛冶屋として創業した同社は、大正時代に歯車をつくる工作機械を導入。主に製紙業向けに歯車を軸とする機械製造を手掛けていましたが、当時の工場は高松空襲で焼失してしまいます。戦後、復員してきた職人たちと「もう一度やろう」と再起を誓い、焼けた工場を建て直して新たなスタートを切りました。
1970〜90年代にかけては、大手建機メーカーで設計技術を磨いた現会長・小山陽生(おやまきよたか)さんが社長として腕を振るい、設備の充実を図るとともに、歯車の工学知識を深めて社内の設計力を強化していきます。これが現在の同社の強みである、歯車や歯車を組み込んだギアボックスの設計・製造一貫体制の礎(いしずえ)となりました。
「歯車はあくまで裏方で、当社の製品が動いているところを目にすることはほとんどないでしょう。しかし小さな歯車の回転が生み出す『物を動かす大きな力』が、建設現場でクレーンが重量物を吊り上げたり、物流倉庫のエレベーターが昇降したりする機能の支えになっています。機械装置にとっては心臓ともいえる重要なパーツです」と、代表取締役社長の山口益生(やまぐちますお)さん。
時計などに使う1・5ミリ径から船舶用の数メートル径まで、歯車のサイズはさまざま。主力商品は建機メーカー向けの量産品ですが、1個からのオーダーメイドにも対応し、「これと同じものがつくれないか」と壊れた歯車を持ち込まれることもあるそうです。山口さんは「たった1個の歯車でも、壊れたら大きな機械が動かなくなることも。困っているお客さまに対応できるのは、高い設計力があればこそです」と語ります。
歯車がきちんと回って正しく力を生み出すには、設計力とともに0・01ミリ精度での高度な加工技術が求められます。中・大型歯車の加工を担う十川工場には、温度変化による加工精度の誤差が生じないよう、室温を一定に保っている部屋もあるほどです。
◯設備の改造も社内で
同社のものづくりを象徴するもう一つのキーワードは「レトロフィット」。劣化した既存の機械を修理して新しい機能を追加することを意味し、同社では半世紀以上前の加工設備を整備・改造しながら現在も主力機として使い続けています。
「古い機械設備は、最近のものより頑丈につくられていることが多い。故障したり摩耗した部分をどんどん入れ替え、手動だった加工の数値制御装置による自動化やIoT化も進めています。古いけれどタフな機械を最新技術で動かすイメージですね」と、取締役・製造部長の大塚俊治(おおつかしゅんじ)さん。改造や整備を担うのは機械構造を熟知した生産技術部門で、図面を起こすところからすべて自社内で行います。
「歯車メーカーが減少している中で、お客さまが求める品質水準と、安心・安全な商品をお届けする体制を守り続けることが重要」と山口さん。「さまざまな分野で電動化が進んでいますが、歯車を動かす動力が電気になっても、歯車機構での動力の伝達は変わりません。歯車がなくなることはないでしょうから、お客さまと一緒に技術の進化に対応していきたい」と語りました。
◎「遊星歯車」が複数個かみ合う「不思議歯車機構」。円の外径に歯を刻むのが「外歯車」、内径に歯を刻むのが「内歯車」
◎製品が完成した時の喜びが一番のやりがい
◎歯車の歯型を削り出す加工
◎山口社長(後列右から2人目)と大塚取締役(同・3人目)現場の加工技術者は別業種から転身して入社後に技術を身に付けた人がほとんど
◎レトロフィット後に活躍している工作機械
◎取引先から4年連続表彰を受けた高い技術力
◎60年以上前に生まれ、30年以上使用している設備を修繕中。機械を止める必要があるため、製造ペースを落とさないよう製造ラインを調整している
◎多品種の製品を効率よく生産できる加工設備
◎歯車を精密測定し、加工精度を確認
※詳細は広報紙8・9ページの写真をご覧ください。
問い合わせ先:(公財)かがわ産業支援財団 取引支援課
【電話】087-868-9904