子育て 〔特集〕うちこ ちびっこ相撲道(1)

「両手を同時について、引きますよ――はっけよい」
8月に開かれた内子町子ども相撲大会で、勢いよくぶつかる子どもたち。健やかな心身を育むことを目的に開かれる大会は、毎年多くの選手と保護者が集まり、会場は活気にあふれています。
今回の特集では、内子の子ども相撲について紹介します。古くから町民の娯楽として親しまれてきた相撲文化。競技に打ち込む子どもたちや周りで支える人々の声から、相撲ならではの魅力に迫ります。

■大人も熱狂、一対一の真剣勝負 子ども相撲がアツい
内子の相撲シーズンは「夏」。町内で開かれた相撲大会には多くの子どもたちが出場し、迫力ある取組を見せてくれました。真剣勝負の一番、一番――。勝っても負けても、頑張る子どもたちの姿は、いつも元気を与えてくれます。

●内子町子ども相撲大会 8月8日
「第19回内子町子ども相撲大会」(内子町教育委員会・内子町PTA連合会・内子町相撲協会共催)が共生館で開かれました。個人戦と3人制の団体戦に、町内の小学校6校から約60人が出場。大人顔負けに力いっぱいぶつかる子どもたちに、応援席の児童や保護者の熱気あふれる声援が送られていました。

●愛媛県ちびっ子相撲内子大会 9月14日
内子町相撲協会主催の「第32回愛媛県ちびっ子相撲内子大会」に、県内の相撲クラブ6団体が参加しました。宮相撲を起源とする県大会で、コロナ禍を経て6年ぶりの開催となりました。谷岡菖樹(しょうき)さん(内子相撲クラブ)の力強い選手宣誓で幕を開けた大会は、団体戦準決勝で内子チームが前年度優勝の宇和島相撲愛好会に4対1で勝利。その勢いのまま20年ぶりの優勝に輝きました。

◇Interview 内子町相撲協会 会長 森岡正樹(まさき)さん
祖父の思いも受け継いで地域を上げて楽しめる場に

子どもの頃、「三度の飯より相撲が好き」な祖父が指導する子ども相撲の練習に、よくついて行きました。時間になると仕事の途中でも構わず、裸にまわし姿で軽トラックに乗り、指導が終わったら知清河原で水浴びをして帰る――そんな豪快な人でした。体格のいい子を見ると「どれ、ちょっと当たって来てみい」というのが口癖。本当に相撲が好きでたまらなかったんですね。
相撲協会の役員としても長かった祖父。その孫の私が会長を務めることになった時、地域の皆さんは「お前がやるなら応援しちゃる」と支えてくれました。協会が関わる町大会も県大会も、皆さんの協力あってこそ。本当にありがたいです。大会は大人にとっても、相撲に触れるいい機会。昔のように身近な娯楽として、地域の皆さんに楽しみにしてもらえる行事として残していきたいです。子どもたちの頑張っている姿には元気をもらえます。「自分たちもまだまだ、やらないけんな」と思ってくれたらうれしいですね。

■もっと強くなりたい――内子相撲クラブで活動しませんか――
小学生を中心に活動する「内子相撲クラブ」。町大会などで相撲の魅力を知った子どもたちが「もっと強くなりたい」と日々、稽古に励んでいます。同クラブの皆さんに、相撲を通して学んだことや、競技の魅力などを聞きました。

「正面に、礼」「お願いします」――夕方の六日市自治会館に、子どもたちの元気いっぱいの声が響きます。内子相撲クラブでは週に2回、未就学児から小学生まで約20人が相撲の練習に励んでいます。指導する監督の佐々木剣心(けんしん)さんは、自身も同クラブの出身。子どもたちの動きに目を光らせて「びびるな」「強く当たれ」と檄(げき)を飛ばします。子どもたちは保護者も見守る中、真剣な表情で稽古に打ち込みます。
クラブに所属する坂茜音(あかね)さんと宮岡楓(かえで)さんは、10月12日に京都府で開かれた「第28回全日本小学生女子相撲大会」に出場しました。同クラブからの全国大会進出は3年ぶりとなります。代表の泉清一(せいいち)さんは「内子は県内でも女子相撲を始めるのが早かった。男子に負けず頑張っています。これからも互いに切磋琢磨して、頑張ってほしい」と期待を寄せていました。

●宮岡楓(かえで)さん(石畳小4年)
町の相撲大会で負けたのが悔しくて、去年の9月からクラブに入りました。全国大会では優勝候補と対戦して、レベルの違いを実感。大会後は「どうやったら勝てるんだろう」と考えながら練習しています。クラブには年少の妹など、小さい子もいっぱい。同学年の女の子ももっと増えたらうれしいです。

●達見政輝(まさてる)さん(内子小5年)
クラブのキャプテンをしています。剣心先生はちょっと怖いけれど(笑)、いろいろな技術を教えてくれます。僕は先生と同じ「突き相撲」。宇和島クラブの同級生ライバルに負けないよう、強くなりたいです。練習だけでなく、クリスマス会などの楽しいイベントもあるのでぜひ、のぞいてみてください。

●脇坂茜音(あかね)さん(天神小4年)
初めての全国大会で結果はベスト8でした。正直「もっと行けた」という気持ちで、悔しさのほうが大きいです。自分より大きい相手と対戦することが多いので、相手が攻めにくいように自分は小さく、強く当たれるようになるのが課題です。たくさん練習して、来年はもっと上を目指します。

◇Interview 第20回(平成29年)全日本小学生女子相撲大会準優勝 大野春陽(はるひ)さん(20)
何事も、まず挑戦――「自分にもできる」が自信になる

二つ年上の姉の影響で相撲を始めました。負けず嫌いだから「姉にできて、私ができないのは嫌」と思ったみたい。4・5年生の時に出場にした全国大会では、結果を残せず――。だから6年生では「絶対に上位に行きたい」と思っていました。体力を生かして相手の攻めを我慢して、隙をついて攻めるのが私の相撲。準優勝できて自信になったし、鍛えられた足腰と負けず嫌いは、中学からの部活動でも生かされたと思います。
クラブでは、まずは純粋に相撲を楽しんでほしいです。「自分にもできる」と分かると自信になります。そして少しずつ勝つ喜びや達成感を味わえたら、それが次も頑張れる原動力になるはずです。