くらし こちら、あんぱん室! 最終回(1)
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- 発行日 :
- 自治体名 : 高知県香美市
- 広報紙名 : 広報香美 2025年12月号
■〔祝〕スペシャルインタビュー 脚本家 中園(なかぞの)ミホさん
Q:「あんぱん」の放送が終了しました。
放送を終えた現在の率直な感想をお聞かせください。
A:高知市で行われた最終回パブリックビューイングで、皆さんの反応を直接見ることができて、本当に嬉しかったですし、感激しました。これまでの作品では、視聴者の皆さんと同じ空間で作品を観る機会はほとんどありませんでした。今回、高知の皆さんの“生の反応”を目の当たりにでき、胸がいっぱいになりました。
Q:脚本を執筆するうえで、楽しかったこと、また大変だったことはありますか?
A:毎日の締切は本当に大変で、なかなかしんどいものがありました。それから、のぶ(今田美桜さん)の思春期や青春期を描く場面は、心情的にも苦しかったです。今の平和な時代に、軍国少女を描くというのは、私自身もしんどかったですし、演じる今田さんはどれほど大変だっただろうと、改めて思います。
Q:ご自身に影響を与えたやなせ先生をモデルにした「あんぱん」の脚本を書く中で、特にこだわった部分などがあれば教えてください。
A:最初から、やなせさんを描くということは戦争を描くことでもあると思っていました。戦争の描き方に関してはスタッフの間でもさまざまな意見があり、いわゆる「朝ドラ」的な描き方もいろいろあったかと思いますが、今回はそこにはあまりとらわれず、戦争を思い切って描くということが私のこだわりだったと思います。
Q:「あんぱん」の脚本の中には、やなせ先生の作品がたくさん詰まっています。着想を得たエピソードがあれば教えてください。
A:私、やなせさんの『やなせたかしおとうとものがたり』(フレーベル館)が本当に大好きなんです。あの作品には、弟への愛情と、戦死された千尋さんへの思いが混ざり合っているように感じます。弟を思うとき、やなせさんの中には戦争への気持ちも同時にあったのではないかと思っていて、それが『おとうとものがたり』にも表れている気がします。この作品は、戦争が終わってからずっと後に書かれたものなんですよね。私がやなせさんと親しくさせていただいていた頃は、朗らかで明るい印象しかなく、私自身もまだ子どもでしたから、作品の奥にある深い思いには気づけませんでした。でも、脚本を書くにあたって「一番描かなければならないことは何か」と考えたときに、自然とやなせさんの戦争への思いが浮かんできて、それが私にとっての使命感のようなものになっていました。
『おとうとものがたり』には白黒の挿絵があるんですが、この辺り(香美市香北町)の景色が描かれていると感じました。実際にここに来てみて、「カラーになったら、こんなふうになるんだ」と思って特別な感銘を受けました。だからこそ、ここに住んでいる子どもたちには、ぜひ『おとうとものがたり』を読んでほしいと思っています。
Q:「あんぱん」に出演された役者さんの演技で、驚かされたことはありましたか?
A:みんな本当に素晴らしかったです。北村匠海さんが演じた嵩は、私の知っているやなせさんよりもずっとナイーブな印象でした。でも、実際のやなせさんは、ああいう繊細な一面を持っていた方だったんじゃないかと、今は思っています。子どもたちの前では、明るく朗らかで声も大きくて、まさに“よそいきの顔”だったのかもしれません。千尋役の中沢元紀さんも素晴らしかったですし、寛先生を演じた竹野内豊さんも印象的でした。皆さんの演技に心を動かされる場面が多くて、挙げればきりがないほどです。
