- 発行日 :
- 自治体名 : 高知県香美市
- 広報紙名 : 広報香美 2025年12月号
■〔祝〕スペシャルインタビュー 「あんぱん」制作統括 倉崎憲(くらさきけん)さん
Q:連続テレビ小説「あんぱん」の制作発表から早くも2年が経とうとしています。放送が終了した今の率直な感想をお聞かせください。
A:率直に言って寂しいですね。放送が始まってから終わるまでが本当にあっという間で、1年前に高知でのロケが始まったと思ったら、もう最終回を迎えてしまったという実感です。毎日の収録、そして半年間の放送を通じて、視聴者の皆さんからたくさんの反響をいただきました。それが当たり前のことではないと気づかされ、本当に幸せな時間だったと思います。やっぱり、走っている最中が一番幸せなんだなと改めて感じました。8月にクランクアップしてからは、これまで百人規模で動いていたスタッフや、数百人規模の関係者の皆さんが次の作品へと移っていくのを見て、少しずつ現場の空気が変わっていくのを感じています。一緒に走ってきた仲間が別の道へ進んでいくのは寂しいですが、それでも「あんぱん」という作品が、皆さんの心に残り続けてくれたら嬉しいです。
Q:倉崎さんの中で印象的だった「あんぱん」のシーンやエピソードを教えてください。
A:やはり今年が戦後80年という節目でもあり、終戦後、のぶ(今田美桜さん)と嵩(北村匠海さん)が久しぶりに再会する長いシーンが特に印象に残っています。あの場面は、戦争を経て価値観が180度変わった二人が、これから何を大切に生きていくのかを模索していく、象徴的なシーンだったと思います。中園ミホさんの脚本による丁寧な会話のやりとりがとても印象的で、あのシーンがあったからこそ、最終的にアンパンマンが生まれるまでの流れに深みが出たのではないかと感じています。物語の終盤につながる大切な場面でした。
Q:物語のモデルとなったやなせ先生ご夫妻の人生をドラマに落とし込むうえで、特に苦労された点はありますか?
A:嵩のストーリーについては、やなせ先生の自伝やインタビュー番組、アーカイブ映像などの資料が豊富にありましたので、比較的構成しやすかったのですが、のぶのストーリーに関してはほとんど資料が残っておらず、キャラクターやエピソードを一から創り上げる必要があり、苦労しました。物語をどのように最終週へとつなげていくかについては、制作チーム内で何度も議論を重ねながら進めて、放送された最終週となりました。
Q:今田美桜さん演じるのぶと北村匠海さん演じる嵩の魅力を教えてください。
A:まず今田美桜さんについては、オーディションでオファーさせていただきましたが、彼女がいるだけで現場が明るくなるような存在で、それは演技にも表れていました。彼女のシーンに対する読解力が本当に素晴らしいんです。台本の一枚のペラから物語全体の意図を瞬時に読み取り、自分の中で消化して芝居に落とし込む力がある。さまざまな時代を描いた本作の中で、のぶというキャラクターの心情を的確にとらえ、演技に反映させてくれました。北村匠海さんについては、10代から70代までの嵩を演じるにあたり、最初から晩年を見据えて役作りをされていたのが印象的です。たとえば、若い頃の歩き方ひとつにしても、晩年の姿を逆算して演じていたり、みなさんがイメージするやなせたかしになるためには、どの年代で陽気さやユーモアを足していくのかなど。1年間にわたる撮影の中で、彼が戦略的に積み上げてきた役作りの深さには、本当に感服しています。
Q:「あんぱん」には、香美市出身の樫尾篤紀さんや南国市出身の瞳水ひまりさん、土佐ことばの指導もした西村雄正さんなど、高知県出身者も多く携わりましたが。
A:皆さん本当に素晴らしかったです。高知がご当地の作品ということもあり、なるべく高知出身の方に多く出演していただきたいという思いがありました。実は、樫尾篤紀さんは、千尋役のオーディションにも参加されていたのですが、彼のピュアな人柄や芝居に対する熱意がとても印象的で、最終的に伊達先生役として出演いただきました。瞳水ひまりさんや西村雄正さんもそうですが、皆さんとても素敵でした。
