- 発行日 :
- 自治体名 : 福岡県八女市
- 広報紙名 : 広報八女 2025年9月1日号
■命の選別を許さない社会をめざして
6月24日(火)に開催しました「人権セミナー八女2025」で德田弁護士に講演していただきました。旧優生保護法がもたらした優生思想による障がいのある人やハンセン病患者・元患者に対する差別や偏見の根絶に向けた取り組みを通して、平等にある「いのち」の重みを考えました。さらに、德田弁護士より、市民へのメッセージとして寄稿していただきましたのでご紹介します。
ハンセン病問題の教訓は、戦前の「癩(らい)予防法」、戦後の「らい予防法」によって、ハンセン病患者や元患者およびその家族を社会から分断し「差別」と「偏見」を生んだことです。また、法律が廃止された後も「差別」と「偏見」が解消されませんでした。いわれなき「差別」と「偏見」を温存・助長させないためにも積極的な教育や啓発が重要です。同時に「旧優生保護法」の優生思想は、人が人を選別するという法律でした。それは「差別」と言えます。この法律によって、約2万5千人(厚生労働省資料)もの人が被害にあったことを忘れてはいけません。今、優生思想が根付いていないか問う必要があります。
「新型コロナウイルス」が流行した時、私たちは、ハンセン病問題と同様に罹患者やその家族を偏見の眼差しで見ていたかもしれません。「おかしい」「差別かも」と思ったら、勇気をもって声をあげたいものです。
歴史を変えることはできませんが、歴史を繰り返さないよう、私たちは、確かな人権感覚を高めるとともに、差別のない豊かな社会となるような八女市にしたいですね。
人権啓発係
《メッセージ》
弁護士法人德田法律事務所
德田(とくだ)靖之(やすゆき)さん
昨年7月、最高裁判所は、旧優生保護法が憲法違反であることを明らかにしました。
この法律の背景となった考え方が優生思想です。人間の命を(1)社会に役に立つ命、(2)社会に役に立たない命、(3)社会にとって迷惑となる命のつに選別するという考え方であり、社会にとって迷惑となる人について、不妊手術をするというのが、旧優生保護法だったのです。このような優生思想は、私たちの社会でさまざまに形を変えて生き続けています。
例えば、学校では、社会に役に立つ人間になろうということが教育されますが、このような教えは、社会に役に立たないとされている人たちや社会に迷惑だとされている人たちの生きる価値を認めていないものであり、子ども達に差別する心を生みだします。全ての命は存在するだけで意味があるという考えこそが、差別のない社会を導くために何よりも必要です。
德田 靖之
【日本国憲法第13条】
すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
同第14条
すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
◆人権セミナー八女2025
演題:「見て見ぬふりをしてませんか?~気づかぬハラスメントを防ぐコツ~」
日時:9月17日(水)18時30分~20時
講師:高橋(たかはし)美紀(みき)さん(特定社会保険労務士)
場所:おりなす八女はちひめホール
詳細はチラシや市ホームページをご参照ください。
問い合わせ:人権・同和政策・男女共同参画推進課
【電話】23-1490