スポーツ 【CLOSE UP】勝利のウラ側 仲間と築く夢と挑戦(1)

■Behind the Victory
Building Dreams and Facing Challenges with Friends
秋と言えば、何を思い浮かべますか?食欲の秋、読書の秋、スポーツの秋―。
今回はスポーツの秋にスポットを当て、世界大会で堂々の入賞を果たしたママさんアスリートと、全中陸上で頂点に立った中学生をクローズアップ。
その輝かしい結果は、一夜にして手に入れたものではありません。地道な練習、くじけそうになる瞬間、流した悔し涙…。それら一つひとつを乗り越えるたび、すぐそばには励まし続ける家族の姿がありました。そして、苦楽を分かち合える仲間たちとともに磨き上げた技と心。勝利のウラ側には、支えてくれた人たちへの深い感謝と、夢を追い続けることの喜び、そして楽しむことの大切さがありました。
年齢も性別も生活環境も全く異なる2人のアスリートが、どのようにしてその瞬間にたどり着いたのか―。それぞれの勝利のウラ側に迫ります。そこには多くの共通点が…

◆STAGE1 YAYOI FUKUSHIMA
◇ATHLETE
皆さんは「デュアスロン」という競技をご存知でしょうか?水泳の代わりに「走る」ことから始まり、次に自転車、そして最後にもう一度「走る」耐久レースです。つまり「泳がないトライアスロン」。想像しただけでも過酷な競技ですが、8月に中国で開催された世界大会で、第7位に入賞したママさんアスリートがいます。市内のランニングチーム、ミコフィット所属の福島弥生(やよい)さん(38歳)です。
世界大会、20代の選手ばかりで彼女は最年長選手でした。もちろん、子育て中の母親らしき人は見当たらず…瞬発力の違いや疲労の蓄積に年齢を感じながらも、今回は「過去イチ頑張った」と笑顔で振り返りました。

◇MOTHER
日本でもママさんアスリートは徐々に増えてきていますが、競技と家庭の両立は容易ではありません。家族の理解なしでは実現できず、コーチである夫や同居をして家庭を支えてくれている義理の母に深く感謝していると言います。そして何よりも心強いのが5歳の息子、叶逢(とあ)くんの存在です。実は、息子さんも同じチームに所属しています。小さな体で常にベストを尽くそうとするひたむきな姿勢が、何より励みになっているそうです。いざレースとなると、1週間ほど会えないこともあります。「レースに行ってくる」と伝えると、ぐずることなく見送ってくれる息子さん。幼い子ながらの気遣いが、彼女をさらに強くしています。

◇TEAM
ママさんアスリートの練習面の課題は「短い時間でいかに効率よくやるか」。20代の頃と違い、自身にかけられる時間が限られています。それでも、世界の舞台で戦い続けられるのは、家族の支えだけでなく、仲間たちの存在がありました。
「チームでは5歳から84歳のメンバーが励まし合いながら、それぞれの目標に向かってがんばっています。年齢関係なく、共に切磋琢磨できる仲間がいることが何よりも私の原動力となっています。20代の頃は、日々『タイム、タイム!』で楽しむことができていませんでした。チームスローガン『ガンバルより楽しむ』を意識するようになり、仲間とトレーニングを楽しみ、レースのロケーションを楽しむことで自然とタイムも上がりました。『今が1番楽しい』と自信を持って言えます」。
彼女の勝利のウラには、温かい家族の支えと仲間とともに描く夢や挑戦、そして何より、そのすべての過程を心から楽しむ姿がありました。