その他 After story

秋の日差しがやわらかくなり、まちの空気が少し静けさを帯びてきました。コスモスが風に揺れ、どこからかキンモクセイの香りが漂います。花言葉は「調和」と「謙虚」。どちらも、この季節にぴったりの言葉です。
今月号の特集では、自分の“好き”を仕事にした方々が登場します。空間を創る人、食を彩る人、花を束ねる人、どの言葉にも共通していたのは、「自分の仕事が誰かの時間を彩る」という想いでした。“好き”は、自分の中にとどまるものではなく、誰かと分かち合うことで輝きを増す。そんなことを改めて感じさせてくれました。
「好きなことを仕事にする」ことは、決して逃げているわけではありません。そして1人きりで成り立つものでもありません。遊びに来る人、料理を味わう人、花を愛でる人、声をかけてくれる仲間-。そのすべての時間が折り重なって、ようやく1つの仕事が形になります。自分の時間の中には、いつも誰かの時間が流れているのです。
仕事や暮らしの中で過ごす時間は、自分だけのものではありません。何気ない一言が誰かの励ましになることもあれば、そっと差し伸べた手が、誰かの新しい一歩を生むこともあります。時間は分け合うことで温かさを増すもの。それぞれの“好き”や努力が緩やかに交わりながら、このまちの季節を少しずつ豊かにしていくのだと思います。
秋は実りの季節でもあり、次の季節への静かな準備のときでもあります。「自分らしい生き方」が、誰かの時間をあたため、まちに小さなあかりを灯す-。そんな循環がある日常を、これからも大切にしていきたいですね。
私たちも読者の皆さんと紙面を通じ、大切な時間を共有できるよう頑張ります。それでは、今月のYUKUHASHI LIFE始まります。