- 発行日 :
- 自治体名 : 福岡県大野城市
- 広報紙名 : 広報「大野城」 令和7年6月15日号
本の紹介を通して、皆さんも特別な一冊を見つけてみませんか。
■大野城市教育長 伊藤啓二
◇「魚の棲む城」
平岩弓枝(新潮文庫)
妻の実家の本棚にあった幕末のさまざまな人物の生きざまを紹介する本を読んだことがきっかけで、歴史上の人物を題材にした歴史小説にはまった時期がありました。
この本の歴史上の人物は、今話題の大河ドラマ「べらぼう」に登場する田沼意次です。歴史の学習などでは、賄賂政治で失脚した負の側面が強調されがちの印象でしたが、この本を読むと、江戸幕府の経済状況に危機感を感じ、商業振興によって国を富ませる方策を実行した先進的な政治家だったと想像されます。小説ですからフィクションであることを前提として、人物像を楽しみながら読んでみてください。田沼意次の粋だけど少し不器用な姿と、それを支える幼なじみの献身的な姿が、平岩弓枝の時代小説らしく描かれた作品です。
◇「本日はお日柄もよく」
原田マハ(徳間書店)
「人前で話すことが多い人は読んでみて。参考になるから」と、娘から紹介された本です。
原田マハという作家さえ知らなかったのですが、冒頭の結婚式のスピーチの場面を読んで、「確かにあるある。」と共感しながら読み進めてしまいました。登場人物が言葉の持つ力に目覚め、幼なじみの政界進出のためにスピーチライターに転身し、言葉の師匠の教えを受けながら成長していく物語です。登場人物のやり取りや苦難を乗り越えた末の感動のスピーチがこの作品の面白さですが、話の展開のところどころに出てくる、聞きたくなるスピーチのポイントがためになります。この本を読んでからは、人前で話すときは、エピソードの入れ方、間合い、原稿の使い方、締めくくり方などを考えるようになりました。ぜひ読んでみてください。
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