くらし (特集)動物と共生するために、今できること(4)

■(Special Interview)寄り添い、見守り 地域猫と共に生きる道
志免町の一角で、猫に寄り添い、静かに活動する人たちがいます。人にも猫にも心地よい環境を作るために―。地域猫ボランティアの寺田さんにお話を伺いました。

◇今ある命を守りながら人と猫の共存を目指して
「僕は動物が好きなんですよ」
そう笑顔で話し始めてくれた寺田さん。「不妊去勢手術をして一代限りの命として地域で見守る〝地域猫〞という存在を知ったのは、テレビのニュースでした。知人の縁で活動している方と出会い、本格的に世話を始めました」と活動のきっかけを振り返ります。
現在は近所にいる猫たちに朝晩のエサやりに加え、自宅敷地内に設置した猫用トイレの掃除も欠かさずに続ける毎日。
「猫たちはトイレ以外の道路などでフンをしてしまうこともある。だから散歩をするときもフンが落ちていたら後始末をするなど気を配っています」
不妊去勢手術をするために、捕獲器で野良猫を捕獲することも活動のひとつ。これ以上、野良猫が増えないよう日々コツコツと取り組んでいるのです。
さらに、交通事故や思わぬトラブルを防ぐため、猫を驚かせないよう、子どもたちに声をかけることもあります。
「ただ猫が車の屋根に乗っているときは、爪で車体を傷つけないよう、安全を確認した上で大きな声で猫を注意することもあります。何度か注意するうちに学習してやらなくなるんですよ」

◇家族のように寄り添う存在猫たちがくれる癒やしと学び
寺田さんが活動を始める前は17、18匹ほどいた野良猫も、今は老衰や病気などで5匹ほどの地域猫に減りました。「猫がけがや病気をしたときには、地域猫サポーターに相談して投薬などの対応をしています。中には玄関先で最期を迎える子もいて、そのときは水やご飯を口に運んで看取っています」と語る顔には、悲しみがにじみます。
「たまに腹立つこともあるけど、猫たちは癒やしというか、家族のような存在です。僕は感情が表に出ないタイプなんですが、猫が亡くなると息が止まるくらいつらいですね」
地域猫ボランティアとして猫たちを最期まで面倒を見るために、寺田さん自身も健康に気を付けるようになったと言います。
「猫の数が減ったことで、フンなどの苦情も以前より少なくなりました。エサをあげることで、よその家に入ったり、ゴミをあさったりすることも減ってきている。猫に優しくすることで、人にとっても良い環境になっていると思います。地域の人も猫を気にかけて、温かく見守ってほしい」と寺田さん。その静かな言葉の端々から、「猫も人も安心して暮らせるように」という思いがそっと伝わってきました。