くらし (特集)動物と共生するために、今できること(2)

■飼う前に考えよう
一生を共にするという覚悟

ペットと過ごす日々は、かけがえのないもの。
しかしその命には、病気や老いと向き合う時期もあります。
最期まで責任を持って寄り添う心構えが、幸せな共生には必要です。
その覚悟を、今一度見つめてみませんか。

▼長生きの時代に考えたいペットと暮らすということ
近年、ペットの生活環境や医療体制の向上により、人と同じように長生きする動物が増えてきました。喜ばしいことである一方、高齢化による疾病や介護が必要となることが増え、動物病院での医療費、介護にかかる費用も年々高額化しています。中には世話や介護が負担となったことで遺棄したり、虐待したりと違法行為をする人も。
ペットを飼うということは、大切な命を預かり責任を持つということ。目先のかわいさだけでなく、看病や介護を通して最期まで寄り添う覚悟が必要です。経済的・時間的な負担も含めて、長い目で「本当に飼えるのか」ということを飼う前に考えましょう。

〇動物虐待で摘発された事件の推移(2011年度~2024年度)
※警察庁まとめ

▼ペットを飼う前のチェックリスト
ペットを迎える前によく調べ、よく考え、責任を持って決めましょう

〇飼育にかかる費用は負担できるのか
・初期費用+毎月のエサ代・トイレ用品など
・病気やけがの際にかかる医療費

〇住環境の確認(ペット可の物件か)
・鳴き声など、近隣への配慮ができるか

〇ペットの寿命と自分のライフステージの確認
・予期せぬ病気になった時に看病できるか
・介護が必要となっても飼育が可能か
・子育てや親の介護、自身の加齢など、人間側のライフステージの変化にも対応できるか

▼ペットの一生と心構え
◇幼齢期から成熟期
社会性やマナーなど人間社会との共生を身に付けさせる時期です。しつけをすることで飼い主の将来的な負担を減らし、近隣とのトラブルを防ぎます

〇登録・狂犬病の予防接種
飼い犬の場合は町への登録と狂犬病予防接種が義務付けられています。また、鑑札(マイクロチップ)と狂犬病予防注射済票を飼い犬に装着しておくと、記載されている登録番号から迷子時に飼い主の元へ戻る確率も高まります。

〇不妊去勢手術で守る小さな命
不妊去勢手術は、望まない繁殖を防ぐだけでなく、発情期のストレス軽減や病気予防にもつながります。飼い主の責任として、適切な時期に手術を受けさせましょう。また、病気・けがに備えてペット保険加入も検討しましょう。

〇鳴き声への配慮で穏やかな毎日を
夜間や早朝の鳴き声は、近隣トラブルの原因にもなります。無駄ぼえを減らすしつけや、犬や猫が安心して過ごせる環境づくりを心がけましょう。

〇心がけたい散歩時のマナー
散歩時は必ずリードをつけ、他の人や動物に迷惑をかけないようにしましょう。フンは放置せず、責任を持って持ち帰ることが飼い主のマナーです。

(拾って、気持ちよく!イエローチョーク作戦)
道路上に犬のフンが放置されている時は、飼い主に気付いてもらい自主的な回収を促すため、町ではイエローチョーク作戦を実施中。黄色のチョークでマークし、マナー向上ときれいな町づくりを目指しています。

◇老齢期
加齢による衰えや病気でペットも飼い主も負担が増える時。大変な時期ですが、最期まで寄り添うことで心穏やかにその時を迎える準備をしましょう。

〇健康管理と生活の見直し
犬や猫も年を重ねると、体調や行動に変化が見られるようになります。定期的に健康診断を受け、体調に合わせて食事の内容や量を見直すことが大切です。

〇もしもに備える医療費の準備
ペットの高齢化に伴い、医療費や治療費の負担が増えています。加入しているペット保険の内容を確認したり、医療費の準備をしたりするなど安心して治療を受けられる環境を整えましょう。

〇住環境の工夫で日々を快適に
高齢の犬や猫が安心して過ごせるように、トイレをすぐ行ける位置にしたり、寝床を整えたり、ちょっとした工夫が快適なシニアライフにつながります。

〇考えておきたい介護の準備
シニア期の犬や猫は、排せつの補助や食事の介助、夜間の見守りが必要になることも。家族が同居している人は1人だけに介護の負担がかからないようにしましょう。

〇最期まで寄り添う覚悟
ペットとの別れは、いつか必ず訪れます。いざという時に落ち着いて見送れるよう、みとりの方法や火葬施設をあらかじめ確認しておくことも大切です。

▼獣医師からのコメント
ペットの来院理由は、下痢や嘔吐、皮膚トラブルから腎不全など重い症状まで多岐にわたります。近年では、栄養価の高い食餌やワクチン接種も一般的となり、ペットは家族の一員として人と同じように扱われるようになっています。ペットも命ある存在であり、日々の食餌や排せつ物の処理など、休みなくお世話を続ける必要があります。飼う際には、愛情だけでなく、頭数や費用面、生活環境なども含めて、最期まで責任を持って面倒を見られるかをよく考えることが大切です。安易な気持ちで飼い始めるのではなく、ペットの一生に寄り添う覚悟を持つことが求められます。
(志免ペットクリニック 獣医師 河波良彦さん)