- 発行日 :
- 自治体名 : 長崎県島原市
- 広報紙名 : 広報しまばら 令和7年10月号
■水を求めた信念の池―野田堤の物語
島原半島の最南端、早崎半島には「野田堤」と呼ばれる人工のため池があります。これは雨水を貯める仕組みで、地域の暮らしに欠かせない存在です。このため池が、どのような背景で造られたのかご存知でしょうか?
16世紀後半、早崎半島に「野田新左衛門(のだしんざえもん)」という農民がいました。大きな川のないこの地域で、人々が安定して農業を営むには、ため池が必要だと考えた野田さんは、堤の築造を地元住民に提案しました。しかし、計画地は丘の上。湧き水もない場所に池を作るという案に、住民たちは「水が貯まるわけがない」と反対し、堤の築造は実現しませんでした。ところが、数年後に深刻な干ばつが襲い、人々は水不足に苦しみました。そこでようやく堤の必要性を実感した住民は、野田さんに謝罪し、みんなで力を合わせて工事を始めました。こうして約3年かけて完成したのが、野田さんの名を冠した「野田堤」(周囲約530メートル、面積約1.8ヘクタール)です。
実はこのため池、丘の上にある「雨水を貯めやすい窪地」を利用して作られました。この地形は、島原半島を南北に引っ張る断層の活動によって生じたもので、野田さんはその地形を見抜き、堤の構想に生かしていたのです。
野田さんの地形への深い理解と先見の明によって築かれた野田堤は、450年以上経った今でも地域の暮らしを支え続けています。
問合せ先:島原半島ジオパーク協議会
【電話】65-5540
