その他 第245回 郷土の植物(436)

■ムギラン(ラン科)
阿孫 久見

低地(ていち)から丘陵地(きゅうりょうち)の岩場(いわば)や樹幹(じゅかん)に着生(ちゃくせい)して生育(せいいく)する常緑(じょうりょく)の着生植物(しょくぶつ)です。生育環境(かんきょう)が良いと根茎(こんけい)を横(よこ)にはわせ、群落(ぐんらく)をつくります。
偽球茎(ぎきゅうけい)の先に1個(こ)だけ肉質(にくしつ)で厚(あつ)い、表(おもて)は濃緑(のうりょく)で裏(うら)は淡緑(たんりょく)色(しょく)の全縁(ぜんえん)で互生(ごせい)する卵形(らんけい)の葉(は)をつけます。大きさは長さ1・5センチ、幅(はば)が1センチほどです。偽球茎とは、ランの仲間(なかま)に見られる膨(ふく)らんで肥大(ひだい)した茎(くき)をつけることです。
夏の頃(ころ)、偽球茎に側生(そくせい)する花柄(かへい)の先に、1~3個ラン特有(とくゆう)の形(かたち)をした黄白色(おうはくしょく)の径(けい)2ミリほどの半開状(はんかいじょう)の筒状(つつじょう)になった花を咲(さ)かせます。
和名の由来(ゆらい)は偽球茎(バルブ)を麦粒(むぎつぶ)に例(たと)え、麦蘭(ムギラン)の名があります。
竹田では、里山(さとやま)のケヤキなどの巨樹(きょじゅ)に着生しているものが稀(まれ)に観察(かんさつ)されます。大分県の絶滅危惧種(ぜつめつきぐしゅ)。花期(かき)は5月から6月です。