- 発行日 :
- 自治体名 : 大分県九重町
- 広報紙名 : 広報ここのえ 令和7年12月号
画面の向こうの「心」、見えていますか?~GIGAスクール 時代のネット人権~
現在、九重町のどの教室をのぞいても、当たり前のように見られる光景があります。それは、子どもたちが机の上にタブレット端末を広げ、鉛筆やノートと同じように使いこなしている姿です。GIGAスクール構想により、教育現場のICT化は急速に進みました。調べ学習や意見発表など、学びの幅はどんどん広がっています。しかし、便利な道具は、使い方を間違えれば人を傷つける「凶器」になり得ます。
大分県は2025(令和7)年7月に県内の小中高校生1,500人とその保護者計3,000人を対象に「青少年のネット実態調査」を行いました。調査の結果、ネット利用時の問題として、「悪口や嫌がらせのメッセージを送られた、書き込みされた」など、コミュニケーションに関するトラブルの報告が多く寄せられました。さらに、トラブルに遭っても、全体で23%の子どもが「誰にも相談しなかった」と回答しています。子どもたちは1人で問題を抱え込み、人権No.351「自分で解決できる」と思い込んでいる傾向も見られます。
また、子どもたちの安全を守る「家庭のルール」についても、親子で認識にズレが生じていることが分かりました。家庭でのルールが「守られている」と実感している子どもが57.3%であるのに対し、保護者の実感は23%と低く、大人が見守っているつもりでも、肝心なところで心の安全網が十分に機能していない可能性があるのです。だからこそ学校では、単に操作方法を教えるだけでなく、人を傷つけないための安全な使い方や、万が一トラブルになりそうな時の対処法についても、繰り返し指導を重ねています。
しかし、最も大切な教科書は、私たち大人の「背中」です。私たち大人は、「画面の向こうの『心』」が見えているでしょうか。忙しさや便利さに追われ、言葉という道具を雑に扱い、画面の先にいる生身の人間を忘れてしまってはいないでしょうか。大人が粗雑な使い方をしていれば、子どももまた、画面の向こうの心を想像できなくなってしまいます。
まずは私たち大人が、家庭や地域の中で、互いを尊重し、温かい言葉を交わす「美しい道具の使い方」を見せていくこと。その大人の姿勢こそが、子どもたちに「画面の向こうには心がある」と教える、何よりの無言の授業となります。
12月は、九重町にとって特別な季節です。7日には「いのち・愛・人権フェスティバル」が開催されました。フェスティバルに込められた願いを、ネットという新しい世界でも実現するためにも、まずは大人が手本となり、九重町を「温かい言葉」で満たしていきましょう。
※GIGAスクール
児童生徒1人に1台の端末を整備する国の計画
(教育振興課)
