- 発行日 :
- 自治体名 : 鹿児島県霧島市
- 広報紙名 : 広報きりしま 2026年1月上旬号
松下実雄さん(71)
隼人町出身。
シイタケ作りには妻・さえ子さんのサポートが不可欠とはにかむ。
隼人町在住。
梅の花開く頃に収穫する香り高い『梅子』、香りと形のバランスが整った『桜子』、水分を多く含んで柔らかい『藤子』。これらは全て、私たちがよく知るシイタケの別の呼び名です。「昔から春のシイタケは、収穫の時季に咲く花の名前にちなんで呼ぶ習わしがある。風情があって愛らしいよね」とほほ笑むのは、半世紀以上にわたり隼人町嘉例川でシイタケ農家を営む、松下実雄さん(71)です。
松下さんは農業高校を卒業後、シイタケ栽培を始めました。「野菜作りをしていた父が農薬で手を傷めてね。元来、シイタケは無農薬で栽培するので、食べる人にも安心とおいしさを届けられると思った」ときっかけを振り返ります。
かさのきめ細かさが美しく、肉厚でぷるんと柔らかい、素焼きにするだけでも深いうまみと香りが口いっぱいに広がる松下さんのシイタケ。九州駅弁グランプリで受賞歴のある嘉例川駅の駅弁に使われているほか、市内の学校給食でも提供されるなど、その味わいは多くの人のおなかと心を満たしています。
そんな味を支えるのが、(1※)ほだ木へのこだわりです。松下さんが「おいしいシイタケが育つには、水と温度と刺激の三つが重要」と話すとおり、ほだ木に染み込ませる水にはミネラル豊富な湧き水を使用。さらに、嘉例川の山あいの環境が生む寒暖差や、手間を惜しまずほだ木を1本ずつたたいて生む刺激が菌を活性化させ、良質な味わいにつながるといいます。ほだ木の作り方にも工夫があり、クヌギなどの原木は伐採後すぐに使わず、植生していた土地で2年ほど寝かせて熟成させます。「不思議なもので、伐採してすぐ使うとシイタケの深い味わいが出てこないんだよ。生まれた場所の空気をたっぷり吸わせてあげたい、という気持ちが伝わるのかな」とほだ木への思いをにじませます。
シイタケの品質だけでなく、長年にわたる森林・林業振興や後進の育成、食育といった地域貢献が評価され、昨年5月に特用林産功労者賞を受賞した松下さん。今年は中福良小学校の子どもたちと、(2※)駒打ち体験を行う予定です。「収穫の時に、子どもたちがどんな顔をするのか楽しみ。自分で育てた作物が実る、かけがえのない喜びを感じてほしい」と笑顔を見せます。
「食育を通して子どもたちと触れ合うのがすごく楽しい。シイタケへの純粋な知的好奇心に触れると、もっと教えてあげたいというエネルギーが湧いてくる。これからもそのエネルギーを、みんなにおいしいと喜んでもらえるシイタケづくりに注いでいきたいね」
(※1)シイタケの菌を植え付けて育てるための木。
(※2)シイタケの種菌を原木に打ち込む作業。
