- 発行日 :
- 自治体名 : 北海道札幌市
- 広報紙名 : 広報さっぽろ 2025年12月号
偏見や無理解などの心の中にある見えない壁をなくして、一人一人が多様な人を思いやり支え合う「心のバリアフリー」。
今回の特集では、視覚障がい当事者の方の経験談や、私たちが日常でできる声かけや行動のヒント、みんなで楽しめるスポーツなどを紹介し、その大切さを考えます。
■心のバリアフリーとは?
〜杉本 梢(すぎもとこずえ)さんに聞きました
▽私の「見えにくい世界」
弱視である私の視界は常にぼやけていて、まぶしさや色合いなど、環境によって見え方も大きく変わります。例えば、雪道では点字ブロックが見えなくなり、雪の白さによる光の反射でまぶしさも強く感じてしまうので、一人で外を歩くことが難しいんです。家を出て10秒で迷子になってしまうこともよくありますね。
▽周囲の理解と配慮の大切さ
盲学校に通っていた中学2年の頃、自分の障がいについての考えを伝える弁論大会で評価されたことで、障がいのことを人に話しても大丈夫なんだと思えるようになりました。その後に進学した普通高校では、物理的な環境は整っていなかったものの、自分の障がいを隠さずに伝えることで、周囲が積極的に手助けしてくれるように。障がいを理解してくれる人がいると、こんなに楽しく高校生活を送れるんだと気付きました。しかし、卒業後に就職した会社では、なかなか自分の障がいへの理解が得られずに苦しみ、退職しました。そうした全ての経験が、学校での講演などの今の活動につながっていますね。
▽心のバリアフリーに触れた瞬間
最近うれしかったのは、白杖(はくじょう)を持っている私に、手をけがしている中学生の男の子が、パンの袋を開けてほしいと自然にお願いをしてくれたことです。大半の方は、障がいがある人には頼み事をしづらいと感じると思うのですが、その子は先入観を持たずに接してくれたんです。
ほかにも、スーパーに入ってすぐに、店員の方が「何か困ったことがあったら声をかけてくださいね」と言ってくれたことも印象的でしたね。この一言で、困った時に聞ける人がいるという安心感が生まれて、とても気持ちが楽になりました。
▽杉本さんが考える、心のバリアフリー
心のバリアフリーとは、障がいだけに限らず、世の中のさまざまな事情を抱えている人々を否定せずに、ありのままを優しく受け止めることだと考えています。「そうなんだね」と受け止めてもらえると、それだけで救われることがあるんです。そのために、私たちが普段から心がけたいことは、先入観にとらわれず、その人自身を見てみるという考え方です。それは障がいに限らず、年齢や性別などによる偏見も捨てて、まずは個人として関わり、その人を知るということ。そう思うと、心のバリアフリーは誰にでも関わりのあることなんですよ。
▽市民の皆さんへメッセージ
市内では、障がいのある方が多く生活しています。障がいのある方もない方も、みんなが幸せに暮らせる共生社会の実現のためには、点字ブロックのような物理的な支援だけでなく、人と人とが心を通わせ、支え合うことが大切です。まずは話してみないと分からないという意識を持って、できれば自分からコミュニケーションを取ってみてもらえたらうれしいです。
※杉本 梢さん
一般社団法人日本心のバリアフリー協会代表理事。特別に注文したコンタクトレンズをしても最大視力0.09という先天性の視覚障がい(弱視)による経験と、特別支援学校の元教員としての経歴を生かし、学校での講演やイベントの開催、SNSの発信など、障がいへの理解や心のバリアフリーを広めるための活動をしている。
・杉本 梢さんのYouTube(ユーチューブ)を見てみませんか
YouTubeチャンネル「梢の心になるほど隊」では、自身の体験や前向きな日常の紹介を通じて、心のバリアフリーを親しみやすく伝えています。
■市内の障がいのある方の状況
本市が発行する障害者手帳(身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳)の所持者は、全市民の約7%に当たる、約13万8千人です。身体障害者手帳の所持者は約8万人で、そのうち肢体不自由が約半数を占めます。
・身体障がいの障がい種別割合(2024年度)

■共生社会に関する条例を制定しました
他の人との違いを大切にして、一緒に支え合っていく共生社会の実現のため、市では「誰もがつながり合う共生のまちづくり条例」を制定しました。
問合せ:ユニバーサル推進室
【電話】211-2361
■点字さっぽろ・声のさっぽろを発行しています
広報さっぽろを視覚障がいのある方なども読むことができるように、視聴覚障がい者情報センターでは、全市版の抜粋を点字で掲載している「点字さっぽろ」、全市版の抜粋と各区版の全文を音声で収録している「声のさっぽろ」を作成し、郵送しています。障がいにより読むことが困難な方でご希望の方はお問い合わせください。
・視覚障がいのある方が活用する、6つの点の組み合わせで文字や記号を表現する点字。点字が生まれてから今年で200年!
問合せ:視聴覚障がい者情報センター(中央区大通西19)
【電話】631-6747
問合せ:障がい福祉課
【電話】211-2936
