- 発行日 :
- 自治体名 : 北海道帯広市
- 広報紙名 : 広報おびひろ 令和8年1月号
■空港と地域の両輪で進める路線誘致
市長:路線誘致というお話がありました。以前、釧路や網走と連携して、海外にエアポートセールス※2に行ったことがあるのですが、その時に気付かされたのは、観光地としての魅力を伝えるだけでは十分ではなく、最終的には航空会社との間で、着陸料などの運航条件を詰める必要があるということでした。自治体だけでは空港運営や路線誘致はできないんだと、痛感させられた記憶があります。
山﨑:今まさに仰っていただいたことが、民営化した最大の目的だと私は考えています。自治体や地域の経済界、観光業界の皆さんが、デスティネーション(旅の目的地)としての魅力を伝えていただき、就航の条件交渉を我々HAPが引き受ける。民営化によって、ようやくこの両輪をそろえることができ、エアポートセールスは新しいステージに入ったと確信しています。
市長:なるほど。そう考えると、韓国のエアロK航空(以下、エアロK)の国際定期便就航は、まさにその成果ですね。今回、競合先の空港もある中で帯広を選んでいただいたのは、「十勝・帯広の取り組みに将来性を感じた」という、エアロKのカン社長の思いが決め手になったそうです。この話を聞いたときは、本当にうれしかったですね。
山﨑:エアロKについては、就航後、搭乗率を上げるために、米沢市長にアウトバウンド※3を増やす取り組みをお願いしていました。北海道発着の国際線における日本人搭乗者の割合は平均約5%で、帯広はエアロKの就航時でも10%程度でしたが、昨年7月から8月にかけて、帯広をはじめ十勝の自治体や経済界、観光業界の皆さんが、割引キャンペーンや地元へのPR活動などを熱心に取り組んでいただいたことで、9月には清州(チョンジュ)発帯広行きで43.2%(帯広発清州(チョンジュ)行きは38.4%)という驚異的な数字まで上がったんです。
市長:確かに飛躍的に伸びました。
山﨑:我々は「帯広モデル」と呼んでいますが、地域の皆さんと一緒にエアポートセールスを頑張り、路線を呼び、アウトバウンドを増やす取り組みを実施していく。そうすると、アウトバウンドが増え、路線が定着するだけではなくて、さらなる路線誘致にもつながっていきます。今後、この帯広モデルを成功事例として、道外や海外でも紹介していきたいと思っています。
■空港はブランド発信のゲートウェイ
市長:それでは最後に、山﨑さんの目に映る、十勝・帯広のイメージや魅力、可能性などについてお話しいただけますか。
山﨑:そうですね。帯広はブランド戦略も素晴らしいと思います。帯広という地名にこだわらず「十勝」という大きな枠で発信することで、商品も農作物も、国内だけでなく海外でも認知度が格段に上がってきているように感じています。十勝というワードを使ったこのブランド戦略は、今後の路線拡大の大きな強みになっていくのではと期待しています。
市長:ありがとうございます。「とかち帯広空港」という愛称も20年以上親しまれてきました。令和6年に新たに指定された国立公園にも、十勝の名称が入りましたし、おかげさまで地域の皆さんには、十勝を冠した食品や農畜産物も、数多く生みだしていただきました。また、美食都市アワード※4の第1号受賞都市として帯広市が選ばれたことも、開拓以来、育み、磨き上げてきた、十勝の食というブランドを評価していただいたものと受け止めています。
山﨑:ヨーロッパの人々には「食のために移動する」という文化が根付いています。私が駐在していたイタリアでも、物流が発達していないこともあり、おいしいものを食べるためなら、人々は平気で遠出していました。食の評価誌として有名な「ミシュランガイド」が誕生したのも、もともとは車での旅行需要を喚起して、新しいタイヤをもっと買ってもらうためだったそうですからね。
市長:そういう背景があるんですね。面白いですね。
山﨑:一方で、日本では物流が発達し過ぎていて、海外のように「現地でなければ食べられない」という希少性が薄れてしまっている面があると思っています。だからこそ、食を売り込むことは、単に物流だけではなく、国内外からの人流を生み出すチャンスにもつながってきますし、十勝には食という素晴らしい資産があって、国内はもちろんのこと、海外の人々もひきつける魅力があると思います。
市長:ありがとうございます。この十数年間、「フードバレーとかち」の旗印の下で、19市町村が一丸となり、地域の文化や歴史、食・農・自然といった地域資源を大切に育ててきました。それが今、十勝・帯広のブランドとして実を結んできているのだなと感じ、うれしく思います。
山﨑:十勝・帯広の景観は、まさに「ザ・北海道」だと思いますし、リッチなエリアだと感じています。本州やアジアの人々がイメージするような、北海道を象徴する雄大な景色が広がっていて、その中で育まれてきた人や街並み、食には、決して裕福という意味だけでは表せない、いろいろな意味での「豊かさ」があります。そう考えると、この地域が培ってきたブランド力を、我々がどのように活用して、路線誘致に結び付けていくのか、改めて大きな課題をいただいたなと思っています。
市長:結びに、すごくうれしいことを言っていただきました。十勝・帯広には確かな「豊かさ」があります。その豊かさを未来につないでいくためにも、これからも、とかち帯広空港とともに、この地域の魅力や価値を国内外に向けて広げていきたいと思います。本日はありがとうございました。
※2 エアポートセールス:航空路線の充実や空港利用者の利便性向上を目的とした営業活動。
※3 アウトバウンド:出ていく、外向きの、などの意味を持つ英単語。観光業界では、国内から海外へ行く旅行や旅行客を指す。インバウンドの対義語。
※4 美食都市アワード:「美食都市研究会」と食の専門誌「料理王国」が創設。地域の食材を生かした独自の料理や食文化の発展に優れた都市を表彰。
