くらし 法テラス江差通信(第174号)

■相続放棄の検討時に気を付けること
今回は、相続放棄を検討しているときに気を付けるべきことに焦点を当てたいと思います。
相続人が、被相続人の一切の権利義務(借金を含む)を承継することを単純承認といいます。
民法921条には、単純承認をしたものとみなされる一定の事由が規定されています。具体的には、(1)相続財産の全部または一部を処分したこと、(2)相続放棄などの選択を熟慮するための期間内に相続放棄などをしなかったこと、(3)相続放棄などをした後であっても、相続財産の全部もしくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、または悪意でこれを相続財産の目録に記載しなかったことの3つの事由です。
(1)の「処分」とは、裁判例によれば、相続放棄などをする前になされたものに限定されるようです。ここでいう「処分」とは、財産の現状や性質を変える行為のことをいい、被相続人名義の不動産の取り壊しなどが典型的な行為になり得ます。また、被相続人名義の預金口座を解約するような行為も基本的には処分になり得ます。もっとも、「処分」にあたるかどうかに関する裁判所の判断は、行為態様や客体の価値などによってさまざまなものがあります。
(2)の熟慮するための期間とは、従前から述べている自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内のことをいいます。これも事例によりさまざまな判断があり得ますが、基本的には相続の事実を知ってから3か月が選択の締め切りと考えた方が良いです。
(3)は、相続放棄などをした後に相続財産を隠したりするような背信行為をした場合についての規定です。相続放棄などの後に行われた行為も対象となります。
以上のことからすれば、特に相続放棄を検討する際は、相続財産を勝手に処分するようなことは避けた方が良いです。基本的には、相続放棄をするのであれば、手をつけずにそのままの状態にしておいた方が良いと思われます。
もし、判断に困るようなことがありましたら、早めに弁護士などに相談をすることをおすすめします。

相談のご予約は
【電話】050-3383-5563
までお願いします。
(法テラス江差　弁護士　樋口　直久)

問合せ：法テラス江差法律事務所
【電話】050・3383・5563