- 発行日 :
- 自治体名 : 北海道東神楽町
- 広報紙名 : 広報東神楽 2025年3月号(第726号)
◆これからの子育てを考える「コラムのまとめ」
2年間、子育てに関するコラムを書く機会をいただき、大変感謝しています。コラムのまとめとして、子育てをされている方とその支援をされている方に向けて、最後のエールをお送りしたいと思います。
◇子育てをされている方へ
子育てをされている方には「頑張らない子育て」をお勧めします。「頑張って」しまうと、その成果を子どもに求めてしまいます。「頑張る」よりは「楽しんで」ください。子どもは日々成長し、体験し学んだこと、感じたこと、想いを、子どもなりの行動・表現でサインとして発信しています。そのサインをキャッチして子どもに返す、キャッチボールを楽しんでほしいのです。
「お母さん嫌い」「お父さん嫌い」という言葉の中にも「私の思いをキャッチして」という願い(サイン)が隠されていることがあります。そのサインは「お父さん、お母さんは私を見捨てない」という信頼感の現われでもあります。イヤイヤ期の発動は基本的信頼関係が育っている愛着の対象者(大好きな親・保育者)にしか向けられないのです。子どもが大人に向けてサインを出すことそのものが、大人への信頼であって、子育てがうまくいっていることの証でもあるといえます。
そう考えると、世界中の子ども達の中で、その子にしか出せない個性的なサインを、どのように出してくるのか興味が沸いてきませんか?悪循環がおきるのは、子どものサインを「問題行動」と捉えたときに起きてきます。そのように捉えがちになるときは多分、子どもをしっかり育てようと「頑張って」しまっている時なのかもしれませんね。
◇子育て支援をされている方へ
先のコラムにも「子育てを支援する人は『何かできるか』ではなく『どのように出逢うか』が大事なこと」と申し上げました。育児の不安や困難感を抱えている親は、支援者の知識やスキルよりも、自分と向き合ってくれる人であるかをまず感じ取ろうとしています。「してもらえる人」ではなく「ともに歩もうとしてくれる人」を求めているのです。
「最善」を尽くすことは「完璧」であることではありません。今の自分にできる「ベスト」を尽くして一緒に子育てを考えられるパートナーでいる、ということでよろしいかと思います。
私自身は支援者の在り方として、「一期一会」という言葉を胸に、現在まで支援対象者と向き合ってきました。相手と出逢う前に「心を込めて最善の準備をすること」、相手と出逢った時に「ベストを尽くすこと」、相手と別れるときに「あなたと出逢えてよかった」と互いに言い合えること、「一期一会」ということばの意味をそのように解釈しています。このような人間関係を創造できる人(支援者)でいられるように努力し続けてまいりました。
支援者として必要な知識や技術を習得していくことは、この「最善の準備」に含まれます。どれだけ準備をしたかが出逢いの「質」を決めます。しっかり学び、支援者としてのスキルアップを進めることはとても大事なことですが、相手と「いま・ここで、どのように出逢うか」ということを常に意識されることをお勧めしたいと思います。
◆杉本太平(すぎもとたいへい) プロフィール
宇都宮共和大学子ども生活学部教授。資格は認定心理士、人間関係士。
東京都文京区教育センターの心理相談員や埼玉県下で乳幼児健診・乳幼児発達支援・子育て支援などに従事し、現在大学において保育者養成に務めている。その他、人間関係・HRST研究会会長として関係学理論を背景に独自に開発した地域住民や対人支援の専門職者を対象に心理劇を用いたアクティブラーニング(HRST)の研修会を主催し、子育て支援者の養成を中心に各種の講演活動、子育て・人間関係に関する出版物の発行を行っている。