しごと 【特集】「農家」のしごと 挑戦する人たちの姿―(2)

■牛を大切にして、牛と共に高め合っていく
遠藤牧場
遠藤耕作(こうさく)さん 真由子(まゆこ)さん
夫婦で酪農を営んでいるお二人。夫耕作さんは神奈川県出身。動物好きで、北海道にはずっと憧れがあったそう。大学進学で帯広に来たことを機に、酪農の仕事を志す。酪農スタッフや、酪農ヘルパーを経て新規就農を決意。

Q 1日の仕事の流れを教えてください
夫:朝は5時から餌やりや寝床の掃除をした後に搾乳をして、9時頃に作業を終えて朝食を取ります。日中は授精や診療の牛がいればその対応や、牛舎の環境整備をします。特に作業のない日はのんびりしたり、週末は家族と出かけたりして過ごします。夕方は16時から朝と同じように一連の作業をして19時過ぎくらいに仕事が終わります。

Q 遠藤牧場の強み、こだわりを教えてください
夫:妻と2人でやっているため、作業効率を上げて、牛舎の仕事は基本1人でやれるよう工夫をしています。特別なことをしているわけではなく、なるべく効率的に役割分担をしています。妻には事務仕事や環境整備をやってもらっています。また、つなぎ飼い牛舎の強みを活かして、一頭ごとに牛の状態に合わせて配合飼料の給与量を細かく調整しています。

妻:毎月の乳検データを1頭1頭、表に入力することで、乳量、乳成分、搾乳日数、授精歴などが一目でわかるようにデータ化しています。乳検データを見るだけでは把握しきれないような牛の状態や今の状況がわかるようになります。

Q なぜそのようなこだわりを
夫:少ない人数と少ない頭数でやっているので、1頭1頭を大切に、経営の効率や省力化を常に考えています。

妻:2人でずっと牛舎にいると子どもたちに手が回らないので、効率化して役割分担することで、習い事や送迎に時間を取れるようにしています。

Q これからの目標は
夫:効率化ををさらに突き詰めて、生活にもっとゆとりを持てるようになるといいですね。

妻:できるだけ牛が元気に長く飼えるように努力していきたいと思っています。

Q 酪農ってこんな仕事と一言で伝えるなら?
夫:「牛を大切にして、牛と共に高めあっていく仕事」です。

◇新規就農優良農業経営者表彰で最優秀賞を受賞
昨年11月、新規就農優良農業経営者表彰式が行われ、遠藤さんご夫婦が最優秀賞を受賞しました。この表彰は、優れた農業経営や意欲的な取り組みを行っている新規就農者に対して、(公財)北海道農業公社が表彰を行っているものです。
選考委員会では、牛の個体情報をデータで「見える化」、自家製TMR(完全混合飼料)の給餌など、工夫しながら安定した家族経営を継続してきたことが高く評価されました。
耕作さんは「13年間やってきたことが評価されたのはうれしい。これからもコツコツと続けていきたい」と話していました。

■少しでもいいものが採れればいいなと思います
土井農場
土井厚毅(あつき)さん
高校卒業後すぐに実家で農業に従事。3年前に経営を引き継ぎ、両親と3人で協力しながら畑作を営んでいる。最初は機械の運転にとても苦労したそう。大豆、小豆、じゃがいものほか、小麦やてん菜(ビート)の栽培を行っている。

Q 1日の仕事の流れを教えてください
9月~10月の収穫の時期だと、17時~18時頃までは掘り出し作業をやっています。そこから畑を作ったり、次の日の準備などをして、19時頃には1日の作業が終わります。
収穫はいも掘りから始まって、終盤になってくると、いもを掘りながら、小麦を植えなければいけないので、畑を作り始めます。小麦を植えるのと同時くらいに小豆の収穫が迫ってくるので機械を準備して、小豆の収穫。そのあとはビートも始まるので…、収穫の時期はずっとそんな感じで忙しい毎日ですね。

Q 栽培のこだわり・ポイントを教えてください
大豆は「十勝クリーン大豆」といって、化学肥料や農薬を通常より減らして栽培しています。農薬や除草剤を減らすので苦労は多いですが、農薬の価格が高騰している状況で、そこにかかる費用を減らせているのはいいことかなと思っています。

Q 大変なことはなんですか
クリーン大豆は除草剤や肥料をあまり使えないので、除草機を他の人より多く入れないといけないのが大変なところです。除草機で除去が難しい大豆の列の隙間については、手作業で抜くしかないので大変です。抜かないと毎年草が増えていくので、すぐやるようにしています。

Q やりがいを感じる瞬間は
大きいビートが採れたり、豆がいっぱい採れた時はやっぱりうれしいですね。

Q これからの目標は規模拡大などは現状では考えていないです。今がよくないとも思っていないので、そのままの経営を維持して、少しでもいいものが採れればいいなと思っています。

Q 生産者の立場として消費者へ伝えたいことはありますか
最近は野菜の値段もだんだん高騰しているけれど、どこの農家も苦労して作っているので、たくさん食べてもらえるとうれしいかなと思います。

◇十勝クリーン大豆の歴史
平成11年、大豆に付加価値を付けるため、地域ぐるみで特別栽培(減農薬、減化学肥料栽培)を実践することを目的として、「十勝クリーン大豆生産組合」を設立しました。
同組合では、化学肥料の窒素成分、農薬の使用回数や成分回数を、北海道慣行レベル(その地域の慣行的に行われている節減対象農薬、化学肥料の使用状況)の5割以上削減し、現在10戸の農家が安心・安全な大豆生産を行っています。
(株)登喜和食品が製造する、十勝クリーン大豆を使用した納豆は、JA十勝清水町が昨年からインドネシアへの輸出を始め、販路拡大に力を入れています。

◇(株)登喜和食品では十勝クリーン大豆を使用した納豆を販売しており、まちのふるさと納税の返礼品としても提供されている。