健康 いまさら聞けないがんについて

■今月の保健師
池田 碧妃さん

気温と湿度の高い日が増えてきました。青空の広がるカラッとした爽やかなお天気が続けば嬉しいのですが、なかなかそうもいかないですね。町では8月から12月にかけて集団検診が続きます。町のがん検診は加入保険に関係なく助成を利用できますので、お勤めの方もぜひ集団検診や個別検診をご利用ください。
さて、今回は、いまさら聞けない「がん」についてのお話です。

◇日本人の死因で多いのは?
令和5年の死亡数を死因順位別にみると、1番多かったのは悪性新生物(がん)で約38万人、次いで心疾患、老衰、脳血管疾患となっています。昔は脳血管疾患が死因の最も多くを占めていたのですが、昭和56年に順位が入れ替わって以降43年間、悪性新生物が日本人の死亡原因のトップをひた走っています。

◇がんのはじまり
私たちの体は約60兆個の細胞の中からできていて、細胞分裂を繰り返しながら一定の周期で新しい細胞に入れ替わっているのですが、細胞が分裂する時などにさまざまな要因で遺伝子に「傷」がついてしまうことがあります。この時、がんに関係する遺伝子に傷がつくと正常な細胞周期から外れて細胞が無秩序に増え続け、かたまり(腫瘍)を作るようになることがあります。たった一つの細胞に傷がついたからがんになる、ということはなく、複数の遺伝子に変異が起こり、細胞の中で積み重なっていくことで最終的にがん細胞になると考えられています。遺伝子の変異の組み合わせはがんの部位や種類によって異なるそうです。

◇生活習慣が影響するがんもある
がんと聞くと「遺伝」が原因と思われがちですが、実は日本人のがんの内、男性の約43%、女性の約25%は生活習慣や感染が原因と考えられています。細胞のがん化に繋がる主な要因として、(1)喫煙(受動喫煙を含む)、(2)過度の飲酒、(3)食生活(塩分や塩辛い食品をとりすぎる、野菜や果物をとらない、熱すぎる飲み物や食べ物をとるなど)、(4)運動不足、(5)肥満ややせ、(6)肝炎ウイルスやヒトパピローマウイルスなどへの感染、が挙げられます。
特に喫煙の影響は大きく、都道府県別に見てみると北海道や福島県、青森県などは喫煙率が高く、がんによる死亡率(75歳未満年齢調整死亡率)も高い傾向にあります。
肥満は食道がん・大腸がん・閉経後の女性の乳がんの確実なリスクとなることや、近年大腸がんが増加している背景として高脂肪・高たんぱく食が影響していることが分かってきています。がんも種類によっては生活習慣病と言える、ということです。

◇検診で必ずがんは見つかる?
受けて必ず見つかれば良いのですが、残念ながらどんな検査でも100%見つかるという保証はありません。1センチより小さながんは検査しても発見が難しく、1センチ大になるには10〜30年かかると言われています。ただ、検診の効果を上げることはできます。それは、毎年(乳・子宮がんは2年に1回)検診を受けること、要精密検査になったら病院で精密検査や治療を受けること、女性の場合は乳房の自己触診をすること、です。

◇検診が怖い、という方へ
検診のご案内をしていると、中には「病気とわかるのが怖い」という方もいらっしゃいます。受けるか受けないかはご本人の意思を尊重するのですが、「自分の最期は自分で決めたい」「将来こういうことがしたい」という場合、検診を受けずにいると知らぬ間に病気が進行し、治療の選択肢が狭まってしまうことがあります。
自分の体と言えど、サインが無ければ異変には気づかないもの。自覚症状が出る頃にはかなり病気が進行していることも多いです。将来設計の一助として、定期的に検診で体のチェックをしてみませんか?