- 発行日 :
- 自治体名 : 北海道白糠町
- 広報紙名 : 広報しらぬか 令和7年11月号
VOL.30 幻の水中モグラ、カワネズミ
この原稿を書いている場所は鳥取県。8月下旬からカワネズミという動物の撮影に来ています。カワネズミはトガリネズミ科の一種で、本州と九州の渓流に生息し、水中を泳いで魚や水生昆虫などを食べて暮らしています。いわば川に住むトガリネズミです。その姿を見ることが難しく「幻の水中モグラ」とも呼ばれています。そのカワネズミを探しながら、神奈川から白糠に移住して以来5年ぶりに本州の夏を経験しました。
■カワネズミ探しの大敵は雨
カワネズミを見つけるためには、痕跡を探すことから始めます。一頭のカワネズミの行動範囲は時に1kmにもなると言われています。川をとにかく歩いて、カワネズミのものと思われる糞や食べカスなどを地道に探すのです。基本的な探し方はトガリネズミと同じですが、場所が渓流というだけで難易度はぐっと上がります。ゴツゴツした岩、急な流れや深みが入り混じる中を歩くのはなかなか大変です。でも一番の敵は雨。雨粒や川の増水によって痕跡は流され、再び見つかるようになるまで数日待たなければならないのです。今期は雨がとても多く、今も大きな雨音とカエルたちの大合唱が、私のため息などお構いなしに響いています。
■本州の生き物たちと再会
それでも川を歩けば、久しぶりに夏の本州に来たことで、北海道にはいない、もしくは見る機会が少ない生き物たちと出会えました。それは旧友と再会したような不思議な感覚を覚えるものでした。オニヤンマやトノサマガエル、マムシなど、どれも私が子どもの頃に夢中になった生き物です。残念ながら今はもう持っていない、子どもだけのあの特別な感覚でその生き物と接した経験がどんなに貴重だったかと大人になって思います。未来の子どもたちもそうした体験ができる自然環境であり続けてほしいです。
○PROFILE
六田晴洋 ろくた はるひろ
1986年生まれ。
2021年に白糠町へ移住。
大学卒業後、フリーランスのカメラマンやディレクターとして野生動物や自然風景を撮影している。
【URL】https://rokutaharuhiro.com
