くらし 産業振興と観光を加速する拠点へ 〜おおのキャンパス活性化構想(グランドデザイン)を策定〜

町では、産業振興と観光の拠点施設である「おおのキャンパス」が持続可能な施設として活性化を図るため、令和6年5月に「おおのキャンパス活性化検討委員会(委員長・菊地良覺(りょうがく)東北工業大学名誉教授)」を設置し、5回の委員会を経て、今年3月に「おおのキャンパス活性化構想(グランドデザイン)」を策定しました。活性化構想の概要を紹介します。

■現状の調査・分析と課題
(1)財務調査
自律的な経営のため、伴走型で経営管理を支援できる人材確保と事業見直しによる「選択と集中」で、収益性の高い事業への経営資源の集中が必要と指摘を受けました。

(2)アンケートandワークショップ
町民・施設利用者・小中高生等対象のアンケートで計3176件の回答があったほか、従事者・生産者・関係団体などによるワークショップを実施し「産直を元の場所に戻してほしい」「案内や表示、SNSなどの情報発信を工夫してほしい」といった意見が挙げられました。

(3)老朽度調査
キャンパス内31施設を調査したところ、法定耐用年数を経過している建物が多く、約7割の建物の大規模改修が必要との結果となりました。
これらの調査・分析で明らかになった課題と解決策(表1)を示しました。

■課題解決のための構想
「自然と共生しつつ、耕作と工作等の体験を通し、生活技術力を身につけられる『おおのキャンパス』」をスローガンに、5つの目標と5つの重点プロジェクトにより取り組みます(表2)。
27ヘクタールの広大な面積を保有する「おおのキャンパス」を、目的用途に沿って効率的に利活用するため5つのゾーンを設定しました(図1)。
重点プロジェクトを推進していくための体制として、町や指定管理者である(一社)大野ふるさと公社だけではなく、各種協力団体や専門アドバイザー、利用者、町民、教育機関などさまざまな関係者がワンチームとなって計画、実行、評価、改善していく組織づくりを進めていきます。
ページ上部のイラストは、おおのキャンパス将来像のイメージです。現在の食の館とゆうきセンターの場所に食事・休憩・産直・情報提供機能を持つ地産地消館(仮称)を新設するほか、産直おおのの跡地を利用し、天候に関係なく木製遊具に触れることができる杢育(もくいく)館(仮称)への改修などを見込んでいます。

▼(表1)6つの課題と8つの解決策
○課題
(1)産直が主要駐車場から遠く集客に不向き
(2)施設が点在し移動が困難で、案内も不足
(3)経年に伴う施設の老朽化
(4)人材確保や育成の取り組みが不足
(5)施設構成や事業が分散し、収益性が悪い
(6)現代に見合うSNSなどの情報発信が不足

○解決策
(1)新たなゾーニングエリアを設けることによる目的用途や諸機能向上
(2)既存施設の老朽度、収益性等を考慮した施設配置計画を策定
(3)管理のしやすさ、ランニングコストの削減、テナント方式の導入を含めた経営改善につながる施設整備
(4)適正な職員数を確保し、研修等でのスキル向上により接客サービスを充実
(5)使い手からの満足度・要求度の高い機能を高めた施設配置計画や改修
(6)SNS等の活用や新たなコンテンツ作りをはじめ、新キャラクター等を提供
(7)道の駅の新たな機能強化(特に防災機能)を図り、緊急時対応可能な体制・設備の充実
(8)具現化のため重点プロジェクトを設け、推進を図るための新たな運営体制を構築

図1 ゾーニング図
(1)自然観察・健康増進ゾーン(天文台、パークゴルフなど)
(2)休養・研修・社会福祉ゾーン(グリーンヒルおおの、おおの健康の湯など)
(3)家族ふれあい体験ゾーン(動物ふれあい館、芝生エリアなど)
(4)生活技術・杢育・食育体験ゾーン(木工房、陶芸工房、織物工房など)
(5)地産地消・情報提供・休憩・防災減災ゾーン(道の駅など)
※詳しくは本紙をご覧ください。

▼(表2)スローガン、5つの目標と5つの重点プロジェクト
○スローガン
自然と共生しつつ、耕作と工作等の体験を通し、生活技術力を身につけられる「おおのキャンパス

○5つの目標
(1)有形無形の地域資源を最大限に活かす
(2)使い手と作り手の協働による「耕作と工作」の実現を目指す
(3)食育・杢育教育の拠点形成を目指す
(4)世代間交流などの実践を通し「関係交流人口」の増幅を目指す
(5)自然災害などの防災拠点形成を目指す

○5つの重点プロジェクト
(1)自然体験PJ
(2)健康増進PJ
(3)食育・杢育PJ
(4)耕作・工作PJ
(5)地産地消・防災減災PJ

■菊地委員長「協働による具現化が重要」
「おおのキャンパス」は、1979年に東北工業大学の秋岡芳夫(よしお)教授が旧大野村に「一人一芸の村」計画提案を行ったことから始まり、その後「大野木工」が生まれたのをはじめ、さまざまな施設整備や取り組みを経て、現在に至っています。
半世紀を迎えようとしている「おおのキャンパス」の再生の途は、多くの人たちとの協働による具現化を目指すことが重要で、一つ一つの動きの積み上げが次世代にも繋げられるような姿にしたいとも思っています。多くの皆さまのご協力を頂けたら幸いです。