- 発行日 :
- 自治体名 : 宮城県角田市
- 広報紙名 : 広報かくだ 令和7年9月号
『禁煙を先送りしていませんか』
金上病院 山本 友香
令和5年の厚生労働省の調査によると日本の喫煙率は15.7%で、10年前の約20%から男女ともに大きく減少しています。健康意識の高まりや喫煙環境の規制強化、経済的負担の増加などを背景に今後も喫煙率は減少し続けると予想されています。時代の流れで「そのうち自然に禁煙できるだろう」と考える人もいらっしゃるかもしれませんが、禁煙はそんなに簡単ではありません。
学生時代に腫瘍学で学んだ「禁煙は自発的に発がんリスクを下げる最大の方法」という言葉が今も強く印象に残っています。喫煙は肺がんや心疾患の主要な原因であり、禁煙は健康を守る上で最も効果的な手段です。医療現場で喫煙する患者さんに出会うたびに「明日にでも禁煙して欲しい」と伝えても思いが届かず、もどかしさを感じることがあります。既にたばこの害は皆さんご存知なのですが、それでもニコチンの強い依存性により新しい1本に手が伸びてしまう。これが依存症の現実です。
禁煙は一人で頑張る必要はありません。今は医療保険で治療が受けられます。ニコチン依存症と診断された場合は禁煙補助薬(現在は貼付薬のみ、経口薬は供給停止中)の処方が受けられます。禁煙外来では約3カ月で5回の通院を目安に治療が完了します。過去の治療から1年以上経過していれば保険適用で再治療も可能です。また、近年急速に普及している加熱式たばこを吸っている人も禁煙治療の対象になります。
禁煙に成功された人たちからは、「痰(たん)が減って調子が良い」「たばこ代が不要になり、ついでの買い物が減った」との声が多く、経済的メリットも大きいようです。禁煙はあなた自身の健康はもちろん、周囲の人々の健康も守る大切な選択です。ぜひ勇気を持って、一歩を踏み出してみてください。