- 発行日 :
- 自治体名 : 秋田県
- 広報紙名 : あきたびじょん 2025年10月号
■損して得とれ
父は大阪の商家の生まれでしたが、戦争で没落し、少年時代は本当に貧しかったそうです。母と結婚した後もしばらく職を転々とし、私がまだ小さいときに神戸で新聞販売業に落ち着きました。
しかし、この仕事、当地では四大紙と地方紙などが競合する厳しい商環境。ライバル紙との激しい争いを見ながら、私は商売って大変なんだな…と思っていたものです。
そして1995年1月17日。私の町は震度7の揺れで壊滅し、多くの人が小学校などで長い避難生活を送ることに。その間も父の店には本社から新聞が毎日届きましたが、配るお客さんの家がありません。そこで父は、各避難所に何十部かずつ、新聞を毎日無償で配ることにしたのです。
TVも映らず情報が入らなかった避難所では大変喜ばれました。そしてその後、復旧が進むにつれ、なんと父の店の販売部数は急増。避難所でのことを覚えていてくれたのでしょう。父は最初からそれを狙っていたわけではないのですが、これも商売なんだな…と学んだ19歳の私でした。