くらし 特集 スタートアップ×大館市×対話(2)

市長直談判ピッチで公民連携パートナーとなった株式会社Rehab for JAPANの池上晋介さんに大館市での取り組みや思いなどについてお聞きしました。

■きっかけは市長への直談判
「大館にはスタートアップ出身の若い市長がいて、挑戦を歓迎してくれる土壌がある。市長に直接ピッチできる場があるから、来てみないか」と声をかけられたのがきっかけでした。正直、それまで大館市について詳しく知っていたわけではありません。それでも、市長と直接向き合って話せる機会があるというのは、スタートアップの立場からすると非常に大きな魅力でした。

■行政と同じ方向を向いて進んでいる感覚
実証を始めて感じたのは、大館市のサポートの手厚さと現場の前向きな思いです。
他の自治体でも同様の実証は行ってきましたが、首長が前のめりでも、現場の熱量が低く、結局前に進まないということもあります。
大館市の皆さんは「どうすれば成功できるか」を自分たちのこととして考え、前向きに動いてくれています。
さらに、実証の場の提供や地域との橋渡しなど、自治体だからこそできるサポートを惜しまず提供してくれていると実感があります。
また、秋田までは遠く、時間が掛かるイメージがありましたが、実際には東京から飛行機で1時間というアクセスの良さも、行き来をしながら継続的なサポートがしやすい点として大きな魅力です。
このような環境のおかげで、私たちの側も、のめり込むようにこのプロジェクトに向き合うようになりました。

■変化を恐れず、大館から新しい未来を
これから大館で挑戦したいスタートアップや、市民の皆さんに伝えたいのは、「変化を恐れないでほしい」ということです。
介護や高齢者の課題は、従来の仕組みだけでは届かない部分がどうしても出てきます。だからこそ、新しい取り組みを試し、失敗も含めて改善を重ねながら、より良い形を一緒に探していくことが必要だと思っています。
大館には、挑戦を応援してくれる市長や職員の方々がいます。これからスタートアップ支援のための仕組み化が進めば、挑戦できる土壌はさらに強固なものになるでしょう。この街で介護予防の新しいモデルが生まれれば、国内はもちろん、アジアや世界にも広がっていく可能性があると本気で感じています。
その未来を、一緒に作っていけるように我々も全力で取り組みたいと思います。

株式会社Rehab for JAPAN
取締役副社長COO 池上晋介氏

■市民との対話で気づかされたこと・広がった視点
市民のみなさんと直接お話をしていると、行政以外の視点の重要性を教えていただけます。
たとえば、子育て世代の皆さんとの対話では、「無償化は確かにありがたい。でも子どもにもっと良い保育や教育環境を与えたい」という声がありました。なんでも無料にするだけが正解ではなく、プラスアルファの保育サービスや英語カリキュラムの拡充など質を高める選択肢が求められている分野があるということを感じました。
また、地域の高齢の方々との対話で「まだ自分たちでできることはある。行政に頼り切りになるつもりはない」という言葉を聞き、胸を打たれました。
行政の立場にいると勝手ながら助けてあげなければならない存在として考えてしまいがちですが、まだまだ力がある地域の皆さんもたくさんいらっしゃって、逆に行政に力を貸していただくこともできるかもしれないと思ったエピソードでした。

■地域の声が政策を変える
このように実際に地域にお住まいのかたに直接お話を伺ったことで地域ごとにまったく違う景色が見えてきました。
そこからさらに地域の中心部と集落部でも細かく課題や価値観が細かく違ってきます。
だからこそ、画一的な政策ではなく、地域に根差した政策や、特色を持った政策など地域の特性にあわせた取り組みが持続可能な地域を作ると思っています。
来年度予定している集落支援員制度の導入もその一つで、地域の声を丁寧に拾い、行政に対して「何が必要か、何が出来るか」という声を届けてくれることによって、より実情に即した政策をつくる基盤になると期待しています。
そして、若い世代との対話から得た気づきが学生時代の「経験」の大切さです。
大館で過ごした楽しい経験があるかどうかが、将来この町に帰ってくる理由になる。
行政は結果ばかり求めがちですが、学生時代の体験で大きな宝になるのは結果ではなく「過程の価値」です。
大人になってからはあまり意識しない、日常の些細な出来事でも、子どもたちにとっては将来大館市に戻ってきたいと思うきっかけになります。
そんな体験を支え、大館で過ごした時間が良かったなと思ってもらえる街づくりをしていくこともこれからの大切な仕事だと感じています。
渋谷で大館出身の学生の皆さんとの対話を行った際には、大館市ではない場所で話すからこそ出てくる意見があるとのことでした。
今後は、市内外のさまざまな場所で学生の皆さんとの意見を交わせる場を増やしていきたいと思います。

■これからの対話が描く未来
市民のみなさんとの対話で得た課題やアイディアを、産業・農業・観光・教育など各業界と一緒に政策へ落とし込む段階に入っていきます。
これまで行政主導で行ってきた政策の一部は時代の変化に伴って、民間側への押しつけになってしまっている可能性があります。
これからは民間が主役となり、行政はその背中を後押しする存在として動いていきます。
そのためにも各業界の「今何を一番にやるべきなのか」を今後は議論していきたいと思います。
スタートアップとの協働についてもお話ししましたが私は、「大館には挑戦する人を心から応援する力がある」と強く思っています。
その力と、市民の声を生かしながら、これからも行政と民間の力を合わせて地域の未来を一緒に作っていきたいと思っています。

■市長と話そうの各地区の模様はYouTubeでご覧になれます
□城南学区
テーマ:子育て
世代を問わず交流できる場の創出、安心して出産・子育てができるまち、子育てに係る制度の緩和、学校になじめない子どもの居場所、子育て施策の選択と集中など

□有浦学区
テーマ:子育て
公園設備・見守り体制の整備、延長・夜間保育の浸透と充実、放課後児童クラブの年齢制限緩和、空き教室の利活用、保育料無償化などの在り方など

□田代地域
テーマ:地域の将来
町内会や人口減少に対する市の関わり方、地域の担い手の掘り起こし、医療・福祉・介護など地域の実状に合った町機能の効率化、少子化に伴う学校のあり方、DX推進など

□花岡・矢立地区
テーマ:地域の将来
閉校となった学校の利活用、町内全体での助け合いの仕組みづくり、子どもたちが過ごしやすい環境づくり、地域の若者の声の発信、市による休耕地・空き家の活用、クマ対策など

■令和7年11月 石田市長とのトークセッションin渋谷
首都圏の大学などに通う市出身の学生の方々と市長がおおだての将来像について意見を交わしました。当日は元プロサッカー選手で市観光大使の百瀬俊介さんがアドバイザーを務め、若い世代の地元定着や移住・定住などのヒントを得ることができました。