くらし 町長歳時記 (218)

■人生を見つめ直す
~胎動の春に感謝して~

人間は1分間にだいたい15回くらい呼吸をしていると言われています。ちなみに私の場合は12回前後でありました。人間は1日で約2万回呼吸をしているとも言われています。1分間に15回呼吸をしているとすると、1日で2万1600回呼吸をしていることになるのだそうです。私たちは無意識の内にこんなにも呼吸をしているのかと、数値を聞いて改めて「私たち人間は人智の及ばざるがごとくの世界に生かされているのだなあ」と感じたところでありました。
意識するとしないとに関わらず、私たちが生きて行くという中で、大切に行われている動きがあるということ自体に深い思いを抱かされます。と同時に、この世にあっては私たちにとって計り知れない大いなるものの中に、秩序正しく生かされているのだという思いも感じるところであります。
「田舎の空気はなぜおいしいのか」という問いに対して、その答えは「植物によって新鮮な空気がつくられているから」と言うものでありました。言うまでもなく植物は二酸化炭素を吸収して酸素を出し、動物は酸素を吸って二酸化炭素を出しています。都会は、人口が多く植物が少ないので、このバランスが崩れているというのです。高さ10メートルの樹木1本で、6人分の酸素が供給されているのだそうです。そのような樹木がたくさん生え、草々が生い茂っている田舎では、新鮮な空気がどんどんつくられている。こんな当たり前の事実を再認識させていただくだけで、この町に住んでいる私たちはなんとありがたい環境の中に暮らすことができているのでしょうと、自然に頭のさがる思いであります。
山々が萌黄(もえぎ)色から若々しい新緑に彩りを添え、色とりどりの花々に包まれた空気感に身をゆだねた時、「ああ、なんと私たちは幸せな空間に抱かれているのだろうか」と、思わずこの自然に、そして空気に感謝の気持ちを捧げたくなるのです。

朝日町長 鈴木浩幸