くらし めぐみをつなぐバトン(3)

■第四のバトン 地域のめぐみ 市内企業
◆未来につなげる
高校生たちがつないだバトンを実践的なプロジェクトを通して、付加価値を高める「めぐみ」があります。
(株)マルトは、60年以上にわたり地域に愛されてきたスーパーマーケットです。新鮮でおいしい食材の安定供給を使命とし、東日本大震災の際にも一部の店舗で翌日から営業を再開させるなど、地域のライフラインとしての役割を果たしてきました。
そんな地域に根差した同社が取り組んでいるのが、高校生との商品開発プロジェクトです。高校生の発想や工夫を最大限に取り入れながら地元農林水産物を使用した商品開発を進め、地元食材の魅力発信につなげるとともに、高校生のキャリア形成に寄与することを目的としています。
また、本プロジェクトは、磐城農業高校や小名浜海星高校での取り組みに加え、磐城桜が丘高校や平商業高校といった普通科等の高校生にも対象を広げ、学校生活だけでは得られない食品や販売の知識、そして地元食材の魅力などを知ることができる貴重な機会となっています。
さらに、こうした商品開発においては、木村ミルクプラント(株)、小泉食品(株)、(株)相馬屋、(株)夕月、西野屋食品(株)など、地域の食品メーカーも趣旨に賛同し、高校生たちの思いを形にすべく、全面協力しています。
地域のさまざまな企業が手を取り合って高校生たちの挑戦を支え、育んでいく、そのつながりこそが本市の「地域のめぐみ」です。

◇Interview 「人づくり」は地域企業の使命
(株)マルト商事 商品開発室 次長 竹之下 貴士さん
私たちは、いわきの豊かな自然で育った食料資源の活用と、未来ある高校生の食を通した人づくりを目的に、6年前から商品開発プロジェクトを開始しました。
商品開発から店頭販売までの一連の流れの中で、将来の糧になるような経験をしていただきたいと考えています。開発する商品には必ずいわき市産の食材を使うことで地産地消を進めるとともに、地域の食品会社や行政と一緒になってプロジェクトを進めることで、市全体が活性化することを目指しています。
これまでプロジェクトにご協力いただいた皆様のおかげで、多くの商品を形にすることができました。今後も高校生の成長する姿を励みに、挑戦を続けていきたいと思います。

■いわきのめぐみ 私たち
はるか遠い昔、先人たちがこの地に蒔いた一粒の種。
その種が、人・大地・海・地域というバトンによってつながれ、
「いわきのめぐみ」として、私たちのもとへ届きます。

◆私たちにもバトンがある
間もなく、東日本大震災から15年の節目を迎えます。あの日、離れかけたバトンをつなぎ続けるために始まったのが「いわき見える化プロジェクト」。
15年という長い年月にわたり、復興への歩みを着実に進め、不撓(ふとう)不屈の思いで、安全性の可視化、常磐ものをはじめとした食のブランディング、伝統野菜の保存活動、そして人づくりなど、さまざまな挑戦に取り組んできました。
いわきの食の伝統や文化を守るため、そこに携わる人が一丸となって築いてきた「安全安心でおいしい食材」。そして、これらを未来の農林水産業につなげるため、挑戦を続ける高校生たちとそれを支える地域の力。
こうした「いわきのめぐみ」によってつながれたバトン。このバトンを受け取った私たちは、どう行動すべきでしょうか。
地産地消の推進、食育、フードロスの削減、生産者への感謝など、今日からできる一つ一つの行動が、次世代に渡すバトンに変わります。
数々の困難を乗り越える中で生まれた、いわきの食の根底を支える「安全で質の高い食を届ける」という強い思いは、これからも人を育て、新たなめぐみを生み出していきます。