- 発行日 :
- 自治体名 : 茨城県行方市
- 広報紙名 : 市報なめがた No.246(令和8年2月号)
■行方アートトリエンナーレ、などどうでしょう
チューリップの球根を商品にする場合には、花の盛りに花びらが摘み取られる。その大量の花びらが川に流れている光景を目にした前衛いけばな作家の中川幸夫(※1)氏は《摘み取られるチューリップの花びらをいつか空から降らせたい》と思うようになったという。
その願いが、2002(平成14)年の5月に越後妻有(※2)でかなった。「天空散華・妻有に乱舞するチューリップ―花狂―」と題したイベントで。
小雨降る中、信濃川の河川敷に4000人の観衆がドーナツ状に集まり、中心の空きスペースに体を向けている。最前列の人は座り、後ろの人たちは立つような形で。円の中心には、舞踏のレジェンド・大野一雄氏(当時95歳)が、顔を白く塗り、たっぷりとしたドレスを着けて、白いひじ掛け椅子に座している。
その上空に、爆音とともにヘリコプターが現れ、色とりどりのチューリップの花びらが降り始まる。全部で10万枚の花びらが、大地と人間たちの上に降りしきる。
そんな中、大野氏が座ったまま、空に手を伸ばして体全体でパフォーマンスを始めた。それは幻想的なだけでなく鬼気迫るものがあり、その場の観衆は固かたず唾をのんで見守ったそうだが、テレビ画面越しに目にした私も、いつしか息を止め両拳を握っていた。
何といっても感動したのは、花びらが降る中、踊る大野氏に中川氏(当時84歳)が静かに歩み寄り、二人が手を取り合ったシーンだった。
先日、行方の友達が自宅の庭に咲いた水仙を分けてくれた。小ぶりな花びらの白と黄色のコントラストがかわいらしい日本水仙だ。この花の濃厚な香りを胸の奥まで吸い込むと、前述のイベントの様子が脳裏にぱっとよみがえった。
中川氏が存命で、彼に行方市での生け花を依頼したなら、どんな作品を?と考えるだけで胸が高鳴り始まる。
※1なかがわゆきお。前衛いけばな作家を貫き、流派に属さず、生涯を通していけばなの既成概念を覆すような表現を切り開き続けた。
※2えちごつまり。新潟県十日町市と津南町にまたがる地域の総称。
■小林光恵さん
行方市出身。つくば市二の宮在住。
市報行方の本年1月号から、表紙の誌名の表記が「行方市フォント」になりましたね。優しく落ち着いていながら明るさもある素敵な書体です。
市公式ホームページ内で「行方帰省メシ」連載中。
