くらし なめがた大使小林光恵さん書きおろしエッセイ 五感でキャッチ!なめがた漫遊記第18回

■この20年、どんなでした?
年月が早く過ぎる感覚になったことを、周囲の高齢者たちが若い私に言ったものだ。
「一年なんて、横断歩道を一回渡るくらいの感覚で過ぎるから」「私はもっと速くて、矢のように過ぎて行く」「私は瞬まばたきしているうちに過ぎちゃう感じ」
《いくらなんでも、たとえがオーバー過ぎやしませんか?》なんて思っていたけれど…。還暦を経たいま、彼らはただただ素直に実感を語っていただけかもしれない、と思うようになった。とにかく、あっという間に日々が過ぎて行く。
振り返った後にふたたび前に向き直ると、明らかに前の見え方が変わる、あるいは見えなかったものも見えてきたりもするから大切にしたい。今日は、この20年をじっくり振り返る良い機会だけれど、今の私の場合、難しいかもなあ。例えば20年前のテレビドラマやヒット曲だって、最近のものという感覚なんだから。
そんなことを考えながら、9月28日の10時前に、行方市市制施行20周年記念式典の会場(行方市文化会館)の席に着いた。
間もなく「認定こども園のぞみ」の子どもたちによる歓迎演奏・演技が始まった。4歳~5歳の子どもたちが、どうしてこんなにも上手にできるの?と不思議になるほど難しそうな動きや演奏をすてきに披露してくれて、感動で胸いっぱいになった。そして、ここまでになるには、この小さな子どもたちの身に、いろんなことがあっただろうなと想像。あんなこと、こんなこと。先生たちや親御さんたちにも。
子どもたちの熱演が続くなか、来賓席に座るスーツ姿の男性の横顔がちらり見えた。やはり舞台に感じ入っているのか、ぬれた瞳がきらり光った。そんな彼の身にも、この20年、いろんなことがあったことだろう。
年月が早く過ぎる感覚のことなんてどうでもよくなってきて、この日の夜、20年分のスケジュール帳を見返して、悲喜こもごものさまざまな出来事を振り返った。

■小林光恵さん
行方市出身。つくば市二の宮在住。記念式典で子どもたちの舞台を見て、子どもさんの演劇や運動会をはりきって録画する大人たちの気持ちが改めてわかった気がします。撮らずにはおれませんよね。
市公式ホームページ内で「行方帰省メシ」連載中。