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■無痛分娩
無痛分娩とは、主に硬膜外麻酔を用いて分娩時の痛みを取り除く経腟分娩のことです。下半身のみの麻酔で、最適に麻酔がかかれば痛みは感じずに腹圧を感じていきむことができ児が出生したときに産声を聞き抱くこともできます。
「陣痛の痛みを乗り越えてこそ母親になる資格がある」「赤ちゃんも辛い思いをしているのだから痛みに耐えよう」というのは、昭和時代の考え方でした。出産時に強い痛みがあり、それを防ぐ方法があるのなら利用するのは、当然の医療行為と考えます。
一方で、無痛分娩で行われる硬膜外麻酔には、さまざまなリスクがあります。残念ながらこのリスクにより、不幸な転機となった方も報告されています。比較的簡単に出産される方に、このリスクを負うことはお勧めできません。
現在無痛分娩の割合は、アメリカでは7割以上、フランスでは8割以上なのですが、日本では1割程度です。アメリカやフランスでは集約化が進んでおり、全例で麻酔科医が担当しますが、日本でこのような体制が組めるところは極限られた医療機関のみで、日本の分娩の9割以上を担っている総合病院や開業医では、産科医が麻酔も担当しているところがほとんどです。
無痛分娩を選択するか否かは、メリットとデメリットをよく考えた上で判断することが大切です。
医師 中村 秀夫