- 発行日 :
- 自治体名 : 埼玉県志木市
- 広報紙名 : 広報しき 令和7年6月号
朝霞地区医師会/須田義朗(すだよしお)
■脊柱管狭窄症とは
背骨には、脊柱管と呼ばれるトンネル状の構造があり、その中を脳から続く神経の束が通っています。この脊柱管がさまざまな原因によって狭くなるのが脊柱管狭窄症です。脊柱管狭窄症は脊柱が狭窄している部位によって、頚(けい)部脊柱管狭窄症、胸部脊柱管狭窄症、腰部脊柱管狭窄症、広範脊柱管狭窄症に分けられます。最も多い狭窄部位は腰部で、坐(ざ)骨神経痛や後で述べる間欠性跛行(かんけつせいはこう)の原因となります。
■脊柱管狭窄症の原因
脊柱管狭窄症のもっとも重要な原因は加齢です。加齢によって骨が変形したり、背骨の周りの靱帯(じんたい)が厚くなったりすると、脊柱管が狭くなり神経を圧迫します。一方で、生まれつき脊柱管が狭かったり、成長の過程で脊柱管が狭くなるような変化が起こったりする場合もあります。
■脊柱管狭窄症の症状
代表的な症状は手や足のしびれや痛み、つっぱり感、指の細かな動作のしにくさ、歩行の不自由さなどです。進行すると、運動障害が悪化するとともに排尿障害などを引き起こし、日常生活に支障をきたすことがあります。症状は左右両側に出ることもあれば、片側だけの場合もあります。
また、首より下の高さで狭窄が起こっている場合は通常手の症状はありませんが、頚部で狭窄が起こると手の症状と歩きにくさなど足の症状の両方が出ることがあります。
間欠性跛行は、腰部脊柱管狭窄症に特徴的な症状です。これは、歩き続けていると症状が悪化して歩けなくなり、前かがみになってしばらく休むと症状が和らいでまた歩けるようになる状態を指します。腰部の脊柱管狭窄症では、背骨を伸ばすと脊柱管がより狭くなって神経の圧迫が強くなるために、このような症状が現れます。病気が進行すると、連続して歩ける距離や時間が次第に短くなっていきます。
■脊柱管狭窄症の診断
脊柱管狭窄症は、病歴の問診や身体診察とあわせて画像による診断が用いられます。画像検査には主にMRIという磁気を用いた撮像装置が用いられます。MRI検査によって、背骨の変形、骨折、椎間板ヘルニアなど骨の異常の有無や神経が圧迫されている様子、圧迫の重症度などを評価することができます。
■脊柱管狭窄症の治療
脊柱管狭窄症の治療には、大きく分けて保存療法、手術療法の2つがあります。日常生活に問題があまりない場合には、慎重に経過観察をしながら保存療法が行われます。日常生活への支障が大きい場合には手術が検討されます。
■保存療法
保存療法は、運動療法やリハビリテーション、コルセットなどを用いる方法のほか、薬物療法やブロック注射などがあります。薬物療法では外用薬として消炎鎮痛剤を用いるほか、内服薬として鎮痛薬や抗炎症薬、神経の血流をよくするための血管拡張剤などが用いられます。ブロック注射とは、神経組織の周りに局所麻酔薬を注射することで痛みを軽減する方法です。
■手術療法
手術では全身麻酔のもと、狭窄の原因となっている骨や靱帯を一部取り除きます。手術によって神経の圧迫を軽減することができ、症状が改善します。また、背骨が変形していたり関節が不安定になったりしている場合には、固定させるための手術を行うこともあります。手術の内容によっては内視鏡手術が選択される場合もあります。
■まとめ
脊柱管狭窄症は、脊柱管が狭くなることで神経が圧迫されてさまざまな痛みやしびれ、運動障害を引き起こす病気です。加齢が主な原因ですが、早期の診断と適切な治療により、症状を改善することが可能です。生活の質を維持するためには、医師と相談しながら、自分に合った治療法を選ぶことが大切です。
問合せ:朝霞地区医師会
【電話】048-464-4666