スポーツ スポットライト
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- 発行日 :
- 自治体名 : 千葉県松戸市
- 広報紙名 : 広報まつど 2025年6月15日号
■弓道は私の人生そのもの
松戸市弓道連盟名誉会長 範士(はんし)八段 本村 昌克(もとむら まさかつ)さん
「弓道は動かない的が相手なので敵がいません。向き合うのは自分で、自分の精神と戦う武道です」と話すのは、松戸市弓道連盟名誉会長で千葉県弓道連盟顧問・全日本弓道連盟中央委員の本村昌克さん。令和6年度に高い技術と指導者としての資質を備えた人に授与される「範士」に昇格しました。
高校1年生から弓道を始めた本村さん。練習に励み腕を磨いていった矢先、高校3年生のときに自分の意に反して矢を早く放ってしまう〝早気(はやけ)”に悩まされます。弓道をする多くの人が経験する早気。改善することが非常に難しく、本村さんも的中にこだわる強い気持ちと裏腹に、思い通りにならない射(しゃ)の苦しみを味わいました。それでも早気の克服を心に決め、北海道大学弓道部に入部した本村さん。尊敬する師や同じ志を持つ仲間と出会い、共に研鑽(けんさん)しながら充実した時を過ごしました。
大学卒業後、分析機器の営業をしていた本村さん。「分析方法の1つである〝沈殿”と弓道はよく似ています。溶液中の成分がゆっくりと沈んでいき、最後には試験管の向こうが見通せるくらいに澄み渡る。これが弓を引いて心を澄ませる弓道の〝会(かい)”の心境と通ずるものがあります」と、後に範士に昇格する本村さんの根幹には、弓道にも仕事にもまっすぐに向き合って培われた己の精神があったのです。
本村さんが授与された範士とは、全国で約70人、県内では3人しかいない弓道の最高位。技術の熟達はもちろん、見識が高く弓道の指導や普及に尽力するなど、あらゆる面で卓越した人に授与されます。範士という、ほとんどの人がたどり着けない高みへと昇りつめた本村さんは「弓道を日本の伝統文化として正しく伝承していくことや、真剣に向き合い続ける姿勢を示すことが私の使命だと思います」と、弓道を極める志に変わりはありません。
15年程前から外部講師を務めている市立第六中学校弓道部に、今年は新入部員が29人もいると目を細めながら話す本村さん。「中学生たちの成長や若い人が弓道を楽しむ姿を見るのはとても嬉しいです」と、幅広い世代で親しまれる弓道の未来に期待を寄せます。「弓道人口がもっと増えるように、松戸市に広くて使いやすい弓道場を作りたい」と話す本村さんは、今日も後進の成長を見守り続けています。