文化 香取遺産(vol.223)

■九美上にあった競馬場
九美上地区とその周辺には、かつて油田牧(あぶらだまき)という馬の牧場がありました。江戸時代、幕府により下総地域に広く展開していた馬牧(うままき)の一つで、当時の九美上辺りには野生に近い状態の多数の馬が放し飼いで育てられていました。明治になり馬牧は廃止され政府による開墾事業が行われますが、その際に油田牧の中心部は新たに九美上という地名になりました。
このように馬にまつわる歴史を持つ九美上には短期間ですが競馬場が設けられたことがあります。個人経営の牧場内で行われていた草競馬を元に、大正14(1925)年に香取郡産馬畜産組合が競馬場として認可を受け開設した競馬場です。同年秋から開催され、年に2~3回開催されていたそうです。コース規模は当初は一周500mほどで、その後834mに拡張されています。農耕馬が中心のため競馬は農閑期に開催されていて、時には地元青年団の運動会なども行われていたようです。
近代日本の地方競馬は明治41(1908)年の競馬規定の制定、同43年の改正を経て、昭和2(1927)年地方競馬規則の制定により、馬券(勝馬投票券)が正式に認められた「地方競馬」として準公認の競馬となりました。なお、同規則により地方長官(県知事など)が競馬場を認可していましたが、千葉県ではその数は2カ所に制限されていました。ちなみに昭和2年当時では、すでに開設していた九美上と同年開設された柏の競馬場のみが認められています。
その後、千葉県畜産組合連合会が香取郡産馬畜産組合から九美上競馬場の開催権利を買い取り、昭和6(1931)年に柏競馬場に続いて、県内2カ所目として市川競馬場を開設しました。これにより九美上競馬場は廃止となり、程なくして牧場も福田へ移転しました。現在その跡地には畑が広がっていますが、その一部にコースの名残らしきものを見ることができます。

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