- 発行日 :
- 自治体名 : 千葉県長南町
- 広報紙名 : 広報ちょうなん 令和7年6月号
先月号で認知症に合併するうつ状態についてお話ししました。私たちの社会の認知症支援の中で、うつ状態・うつ病はもっとも大きな課題の一つです。うつ状態は、認知症の発症の大きな危険因子であり、さらにそれ自体が認知症の原因のひとつでもあります。また、うつ状態があることで、意欲が低下し、閉じこもりがちになったり、外出の機会が減ることで、人とのコミュニケーションが減少します。体を動かすことが減り、人とのコミュニケーションが減ってしまうことで、認知機能障害の進行スピードが速まってしまいます。うつ状態・うつ病は、さまざまな側面から認知機能障害を悪化させる要因となるのです。
そもそも高齢者では、うつ病が多いことが知られています。それは私たちの社会の中で、高齢者を取り巻く環境要因、社会的な要因が大きく関係しています。高齢になると、どうしても身体機能が低下することがあります。高齢になって、認知機能を含む身体機能が低下してしまい、運転が難しくなることがあります。長南町のような、移動手段で自家用車が占める割合が高い地域では、運転ができなくなることで、行動範囲が大きく狭まったりします。特に車好き、運転好きだった人にとって、運転ができないことのショックは察するに余りあります。定年で仕事を辞めたり、社会的な役割が失われたり、子供一家と同居することになって、主婦としての役割が失われたりすることもあります。高齢化に伴い、健康が失われてしまうこともあります。実は高齢化というのは、それまで当たり前にできたこと、当たり前と思っていた周囲の環境が失われることであったりするのです。こうした環境の変化に柔軟に対応できればいいのですが、高齢になって性格・人格の柔軟性が失われたりするため、適応が困難であったりします。こうしたことが要因となり、うつ状態・うつ病を発症することが多いのです。
このように高齢者に多いうつ状態・うつ病ですが、認知症発症の大きな危険因子です。ある研究によると、66歳以上の高齢期に抑うつ状態になったら、認知症の発症リスクは1.9倍に高まります。また、社会全体で高齢期に抑うつ状態になる人がいなかったら、認知症になる人は人口の4%減らせると言われています。
また、うつ状態・うつ病はそれ自体が認知症の原因でもあります。うつ状態・うつ病に伴う認知症は「仮性認知症」と呼ばれています。うつ状態のときには、不安や心配などにエネルギーをとられることで、注意力が低下してしまいます。私たちは日常生活の中で、注意を向けていないと記憶できないため、記憶力、特に新しいことを記憶する記銘力が低下します。うつ状態・うつ病では、まるで頭の回転が悪くなってしまったように、考えが進まず、反応も鈍くなり、理解力・判断力も低下してしまいます。
このようにさまざまな側面から認知機能障害を悪化させてしまううつ状態・うつ病ですが、適切な対応、治療で大きな改善を期待することができる要因でもあります。早めの発見、早めの対応が重要になります。
■上野先生を講師に迎えた「認知症学習会」を毎月開催しています。
ぜひご参加ください。
日時:6月18日(水)15時〜16時(要事前申込)
場所:保健センター
問い合わせ(申込先):福祉課 包括支援センター
【電話】46-2116